染色体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
染色体(せんしょくたい)は遺伝情報を担う生体物質である。塩基性の色素でよく染色されることから、1888年にヴァルデヤー (Heinrich Wilhelm Gottfried von Waldeyer-Hartz) によって Chromosom と名付けられた。Chromo- はギリシャ語で「色のついた」、-some は「物体」を意味する。


染色体は非常に長いDNA分子がヒストンなどのタンパク質に巻き付きながら折り畳まれた構造体である。真核生物では核内に保持されている。染色体には歴史的な理由からいくつかの定義がある。原義では、細胞周期の分裂期に見られる凝縮した構造体を指す (1)。一般的に染色体の形態として認識されている X 状の構造(右図参照)はこの時期のものである。形態や細胞周期に関わらず、真核生物の細胞にあるDNAと塩基性タンパク質のヒストン、およびその他の多様なタンパク質からなる生体物質を指す場合、これはクロマチン・染色質の意味も含む (2)。さらに広義には原核生物やミトコンドリアなどの細胞小器官が持つゲノムも含む (3)。ウイルスのゲノムも染色体と呼ぶ場合がある。通常プラスミドは含まない。本項目において断りがないばあいは (2) の意味での説明とする。

目次 [非表示]
1 染色体の構造
2 染色体の各部位
3 染色体に結合する因子
4 細胞周期における染色体の変化と挙動
5 生物種による染色体数の違い
6 染色体研究史
7 関連項目
8 資料
8.1 種ごとの染色体数の例



[編集]
染色体の構造
染色体の基本構成要素はDNAとヒストンである。一本の染色体には一本のDNAが含まれている。DNAは非常に長い物質であり、細胞核に収納するには折り畳む必要がある。DNAは核酸なので酸性であり、塩基性タンパク質のヒストンとの親和性が高く、全体的には電荷的に中和され安定化している。DNAとヒストンの重量比は、ほぼ1:1である。

最も基本的な構造はヌクレオソームである。8つのヒストンタンパク質からなるヌクレオソームヒストン(コアヒストン)は、約150塩基対のDNAを巻き取ることが出来る。ヌクレオソームの間にはヒストンH1(リンカーヒストン)が結合する。最も低次のヌクレオソームと、分裂期に見られる最も高次の染色体形態の間にあるクロマチン構造についてはあまり研究が進んでおらず、いくつかのモデルが提唱されているものの詳しいことは不明である。ただし、ヌクレオソーム構造はさらに凝集し、直径30nmの繊維となり、通常は顕微鏡下では見えないが、細胞分裂中期に現れる糸状の物体として確認できる。基本的にはこのような繊維が螺旋状に巻き、折り畳まれることによって高次化していく。この過程には、コンデンシン複合体やトポイソメラーゼIIが関与していることが知られているが、その詳細な分子メカニズムはよく分かっていない。

クロマチンには、大きく分類してユークロマチン(euchromatin)とヘテロクロマチン(heterochromatin)の二種類がある。ユークロマチンはクロマチン構造がゆるまっており、転写されている遺伝子はこの部分に多く存在する。ヘテロクロマチンは密に凝集しており、この領域ではあまり転写が起きていない。この部分は、染色体の構造上の変化に際して何らかの役割を負っていると考えられている。ヘテロクロマチンは更に次の二つに分類することができる。遺伝子の発現はほとんど見られない構成的ヘテロクロマチン(constitutive heterochromatin)と、条件によっては遺伝子の発現が見られる条件的ヘテロクロマチン(facultative heterochromatin)がある。前者は主にセントロメア付近にあり、この領域の DNA は繰り返し配列に富む。

[編集]
染色体の各部位

染色体: (1) 染色分体:染色体に含まれる2つの同一の部分のうちの片方 (2) セントロメア: 2つの染色分体が接合する場所で、ここに微小管が結合する (3) 短腕 (4) 長腕染色体は二つの染色分体からなる。染色分体どうしが接合する場所はセントロメアという。核分裂のときにはここに微小管が結合し、両極へ牽引する。セントロメアをはさんで長い側を長腕、短い側を短腕という。染色体の末端部はテロメアと呼ばれる特有の構造をしている。

[編集]
染色体に結合する因子
染色体には多くの転写因子が結合している。RNAポリメラーゼのように基本転写因子と呼ばれるタンパク質複合体や、特定の遺伝子座に結合しその遺伝子の発現を制御するもの、クロマチンの状態を維持または変化させるものなどがある。染色体の高次構造を制御する因子の中で代表的なものには、染色体凝縮に関わるコンデンシンや姉妹染色分体の接着に関与するコヒーシンがある。他にDNAの切断を見張りDNA修復に関わったり、染色体末端テロメアの構造を維持するタンパク質もある。

[編集]
細胞周期における染色体の変化と挙動

分裂中の細胞における染色体(青)と紡錘体(緑)。
DNAの凝縮の各段階: (1) 裸の二本鎖 DNA (2) クロマチンの鎖: DNA(青線)とヒストン(緑丸) (3) 間期の凝縮したクロマチン(青線)とセントロメア(赤点) (4) 分裂前期の凝縮したクロマチン (5) 分裂中期の染色体有糸分裂の最初のステージでは、核膜の消失に前後して、クロマチン鎖が次第に凝縮していく。この染色体凝縮の過程で、クロマチン繊維は移動可能なコンパクトな形態に変化する。凝縮の最も進んだ分裂中期では、2つの染色分体(姉妹染色分体)がセントロメアでより強固に結合した形態をとる。細胞の両極から伸びた長い微小管(紡錘糸)はセントロメアに結合する。分裂後期にはいると、姉妹染色分体間の接着が解除され、紡錘糸は各染色分体を細胞の両極に向けて引き離す。こうして、最終的に各娘細胞は1セットの染色分体を受け継ぐ。細胞分裂が完了すると、染色分体は再びほどけてクロマチンとなり細胞核内に収納される。

[編集]
生物種による染色体数の違い

ヒトのカリオタイプ(男性)。常染色体は大きい順に並べ、番号で呼びあわらす。ある生物の二倍体の染色体を調べたいとき、コルヒチンで細胞を処理し細胞分裂をM期で停止させてからギムザ等の染色を施し、凝縮した染色体の数と形状を観察する。こうして撮影された染色体を並べたものが、核型(カリオタイプ karyotype)(カリオグラム karyogram とも呼ばれる)である。

カリオタイプは種ごとに一定である。例えば、ヒトの2倍体細胞は、22対の常染色体と1対の性染色体、計46本の染色体を持つ。性染色体の組み合わせは女性では2本のX染色体、男性ではX染色体とY染色体1本ずつとなっている。女性の2本X染色体のうちの片方は不活性化されており、顕微鏡下ではバー小体として観察される。

無性生殖で増殖する種の細胞は染色体を1セットしか持たず、その生物の全細胞についてそれが言える。有性生殖を行う種は、二倍体 [2x] かまたは多倍体 [Nx] の体細胞と、半数体の配偶子 [n = x の整数倍]を持つ。二倍体は2セットの染色体で、1セットが父親由来でもう1セットが母親由来である。多倍体は3セット以上の染色体を持ち、1倍体は1セットしか持たない。哺乳類では、受精において雄と雌の配偶子が融合すると、その時点ではまだ二倍体の卵細胞が減数分裂を起こし、受精卵の成熟化がおこる。減数分裂の過程で、母親と父親の対応する染色体同士は交叉を起こしてお互いに部分部分を交換する。このようにして、片親からの染色体をそのまま次の代に渡すのではなく、新しい染色体が作られるようになっている。一倍体は単相、二倍体は複相とも呼ばれる。

なお、男性の持つY染色体はかつて、その大きさや遺伝子の位置などがX染色体と異なることから、減数分裂時の遺伝子の組み換えを起こさない、変異しづらい不活性なものとされてきた。しかし最近では、Y染色体においてもX染色体との交叉による乗り換えが起こっていると考えられている。またY染色体内で、自身の遺伝子の位置が入れ替わっていることが明らかになるなど、実際にはY染色体の変異は比較的頻繁に起きていることがわかっている。




[編集]
染色体研究史
染色体は1842年にカール・ネーゲリ (Karl Wilhelm von Nägeli) によって発見された。1888年その物質を「染色体 (chromosome) 」と命名したのはヴァルデヤーである。1902年にウォルター・S・サットンにより染色体が遺伝子の担体であるとする染色体説が提唱され、1920年ごろまでにはモーガンらにより実証された。

ハエ目昆虫のショウジョウバエやユスリカの幼虫のだ腺染色体(唾液腺細胞中の染色体)は通常の体細胞の染色体とは異なり、多糸染色体とよばれている。この染色体は例外的に、顕微鏡下でよく観察することが出来る。モルガンらによる初期の遺伝子研究では、主にショウジョウバエのだ腺染色体を材料として染色体上の遺伝子の位置が決定され、染色体地図が作成された。これらの成果は近年のホメオボックス遺伝子などショウジョウバエを材料とした遺伝子研究の基礎をなすものとなったばかりでなく、遺伝学全般の基礎をなしていると言える。
共生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
共生(きょうせい・Symbiosis、元の用字は共棲)とは、他の生物から養分や危険からの保護などの利益を得る代わりに、その生物にとって何等かの利益を提供するといった、異なる生物種間の相互依存関係のことを指す。転じて、経済学上の異業種業務提携等もこう呼ぶ場合がある。

双方の生物種がこの関係で利益を得る場合を相利共生(そうりきょうせい)、片方のみが利益を得る場合を片利共生(へんりきょうせい)という。また、片方のみが利益を得、相手方が不利益を被る場合を寄生(きせい)という。しかし、後に詳しく述べるようにこれらの3つの状態は連続しており、どれかひとつに定めることの難しい関係も多い。

目次 [非表示]
1 共生の例
2 細胞外共生と細胞内共生
3 伝播
4 リン・マーギュリスの共生説
5 共生の位置づけ



[編集]
共生の例

カクレクマノミとイソギンチャク魚類であるクマノミと、刺胞動物であるイソギンチャクの共生関係は有名である。イソギンチャクの触手には、異物に触れると毒針を発射する「刺胞」という細胞が無数にあり、これで魚などを麻痺させて捕食している。ところがクマノミの体表には特殊な粘液が分泌され、イソギンチャクの刺胞は反応しない。このためクマノミは大型イソギンチャクの周囲を棲みかにして外敵から身を守ることができる。一方、イソギンチャクがこの関係からどの様な利益を得ているかはっきりせず、この関係は片利共生とみられる。クマノミのほかにもイソギンチャクカクレエビなど、イソギンチャクと共生する生物は多い。
ヤドカリやカニの中には、小型のイソギンチャクをはさみや貝殻につけて身を守る種類がある。ヤドカリは自分の体が大きくなると貝殻を替えなければならないが、そのときはヤドカリがはさみで剥がしたり、イソギンチャクが自ら移動する。お互いに食物のやりとりもしているとみられる。
相利共生の例として地衣類(ちいるい)が挙げられる。ウメノキゴケなどの地衣類は菌類と藻類(シアノバクテリアあるいは緑藻)からなる共生体で、菌類は乾燥などの環境変化から共生体を保護し、藻類は光合成によって栄養供給の役割を担っているなど、高度に相互依存している。
マメ科の植物は根に根粒菌と呼ばれる細菌を共生させている。根粒菌は植物が利用不可能な大気中の窒素を、植物が養分として取り込むことのできる窒素固定産物として供給し、植物は根粒菌に栄養として炭水化物を与えている。
アブラムシ(アリマキ)と、その細胞内で生息するブフネラという細菌は、非常に強い相利共生の関係にある。アブラムシが主食としている植物の師管液には、グルタミンとアスパラギン以外の必須アミノ酸はほとんど含まれていない。本来ならアブラムシはこれだけで生命を維持することは不可能なはずである。しかしアブラムシの細胞内のブフネラが、これら2つのアミノ酸を基に他のアミノ酸を合成し、アブラムシの細胞内に供給しているため、師管液のみで必要な栄養を得ることができる。アブラムシはブフネラなしでは生命を維持することができない。一方、ブフネラは自らの生命を維持するための遺伝子の多くを失っており、アブラムシの細胞内でしか分裂・増殖することができない。この共生関係は2億年にわたり世代間で引き継がれてきており、共生がなされる以前のブフネラの祖先は大腸菌の仲間であったと考えられている。(Shigenobu, S. et al. Nature 407, 81-86 (2000))
[編集]
細胞外共生と細胞内共生
微生物の共生を考えた場合、大きくわけて細胞外共生と細胞内共生とにわけることができる。前項にあるアブラムシではアブラムシの細胞内にブフネラが生息しており、こういった共生形態を細胞内共生と呼ぶ。逆に細胞外に作られた構造体(粘液性物質や糖鎖などで作られる)中で共生する形態を細胞外共生と呼ぶ。一般的に細胞内共生の方が単独で生育不能なことが多く、そのために必要な遺伝子を失っていることも多い為、より進んだ共生であると考えられている。 これに対し、クマノミとイソギンチャクのような関係は体外共生と呼ばれる。

[編集]
伝播
共生関係をとる生物が出会い、共生関係になる過程を伝播と呼ぶ。卵などを通じて親から共生関係を受け継ぐ場合を垂直伝播、環境を介して受け継ぐ場合を水平伝播といい、共生の形態を理解する上で重要な事項である。

[編集]
リン・マーギュリスの共生説
リン・マーギュリス(Lynn Margulis,1938年‐)は真核生物の細胞内にあるミトコンドリアや葉緑体は、細胞内共生をしていた細菌が起源であるという説を提唱した。これらの細胞小器官は独自のDNAを持つことから、1970年代以降この説は広く受け入れられている。詳細は細胞内共生説を参照せよ。

[編集]
共生の位置づけ
元々、生物学の中では、共生は種間関係の中でも特殊なものと考えられがちであった。これは、世の中のものは、基本的には互いに競争関係にあるはずだという西欧科学の思想に基づくものだと思われる。一昔前の日本の生態学者の書いた教科書にも、捕食-被食関係、競争関係、共生関係、寄生関係の4つの生物の種間関係のパターンうち、あくまでも主流とみなすべきは捕食被食関係と競争関係であり、共生や寄生は例外的なものとして重視するべきではないと書いたものもあった。しかしながら、近年、実は、共生が生物の世界でかなり普遍的なものであり、生物の群集構造の中で大きな役割を果たしていることがわかってきた。

マーギュリスの細胞内共生説もその例であり、しかも、細胞内共生が、彼女の想定したものを遙かに超えて行われていることが、最近の研究で明らかになっている。

また、陸上植物の中で、菌根を作るのは、ごく一部の植物だとされてきたのも、VA菌根菌の研究により、実は多数の陸上植物が菌根の形で菌類と共生関係を結んでいることがわかりつつある。 海洋でも、珊瑚礁を構成する造礁サンゴは、その体内に褐虫藻を共生させており、その光合成産物を供給されている。 このように、共生は、生態系に大きな影響を与える様な働きに関わってもいる。

また、かつては共生と寄生は別の現象とみなされたが、関係する生物相互の駆け引きのバランスによって双方が利益を得る状態(いわゆる相利共生)、片方が利益を得るがもう片方には害も益もない状態(いわゆる片利共生)、片方が利益を得てもう片方が被害を受ける状態(いわゆる寄生)が、それぞれ連続して移行しうる例が多く見つかってり、互いにはっきりと分離できないことがわかってきた。

例えば植物の体内で病気を起こさずに生活をしている菌類をエンドファイトと呼ぶ。エンドファイトは片利共生的なものが多いとされている。しかし種類によっては植物はエンドファイトの存在によって摂食阻害物質を獲得して草食動物に食べられにくくなるので、この場合は相利共生的である。ところが、相利共生的なエンドファイトの中には植物の有性生殖を阻害して栄養生殖だけで繁殖することを強いているものも多い。また、植物の生理状態が悪化するとエンドファイトが病原性を発現することもある。

共生の典型とみなされることの多い菌根にしても、植物と菌根菌が双方とも利益を得るもの(コツブタケとアカマツ)、植物と菌根菌の双方が利益を得てはいるのだけれど、植物の側のストレスが大きく、病原菌に近い側面を持つもの(ハルシメジとサクラ・マツタケとアカマツ)、植物が菌根菌から一方的に搾取しているもの(ベニタケとギンリョウソウ)と、多様な実態が知られている。

このように、生を共にするという点では共生と寄生は連続したひとつながりの現象とも言え、寄生も共生のパターンのひとつとしてとらえて、寄生はあくまでも共生のひとつのパターンとみなす場合も多くなっている。
炭疽菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
炭疽菌

分類
界: 真正細菌
門: Firmicutes
綱: Bacilli
目: Bacillales
科: Bacilli
属: バシラス属 (Bacillus)

学名
Bacillus anthracis
炭疽菌(たんそきん、Bacillus anthracis)は、炭疽(炭疽症)の原因になる細菌。細菌が病気の原因になることが証明された最初の細菌であり、また弱毒性の菌を用いる弱毒生菌ワクチンが初めて開発された、細菌学の歴史上で重要な位置付けにあたる細菌である。また第二次世界大戦以降、生物兵器として各国の軍事機関に研究され、2001年にはアメリカで同時多発テロ事件直後に生物テロに利用された。

目次 [非表示]
1 歴史
2 生物学的分類と特徴
3 病原性
3.1 治療
3.2 予防
4 病原因子
4.1 莢膜
4.2 外毒素
4.2.1 防御抗原
4.2.2 浮腫因子
4.2.3 致死因子
5 細菌学における歴史的位置付け
6 生物兵器としての位置付け
6.1 生物兵器に関連するとされる事件
7 関連事項



[編集]
歴史
1850年、フランスのピエール・フランソワ・オリーブ・レイエとカシミール・ジョセフ・ダヴェーヌが炭疽症に罹患した羊の血液中に細菌を発見した。
1855年、ドイツのフランツ・アロイ・アントン・ポレンダーはレイエとダヴェーヌの発見を再確認し、この菌が炭疽症の原因であることを予測した。
1857年、ドイツのフレドリック・アウグスト・ブラウエルは、健康な動物の血液からは決してレイエとダヴェーヌの細菌が見つからないことを確認した。さらに妊娠している家畜が炭疽症に罹患しても胎児には伝染しないことを発見した。
1866年、ダヴェーヌは、汚染された血液を健康な動物に注射し、炭疽を発症することを確認した。
1876年、ロベルト・コッホによってレイエとダヴェーヌの細菌が動物の炭疽症の病原体であることが証明された。コッホの原則に基づいて、初めて細菌と病原性の関係が証明されたものである。
1881年、ルイ・パスツールが、世界初の弱毒生菌ワクチンを、弱毒化した炭疽菌を使って開発した。
1946年、イギリススコットランドのグリュナード島で、連合軍が炭疽菌爆弾の投下実験を行う。この後43年間、グリュナード島は炭疽菌芽胞で高度に汚染された状態となり、その後消毒処理によって回復された。
1979年、ソビエト連邦のスヴェルドロフスクの生物兵器施設から、炭疽菌の流出事故が発生し、住民が肺炭疽を発症。
1979年、ローデシアとジンバブエでの炭疽流行
1999年、日本でオウム真理教が生物テロを試みるが、弱毒化していたために失敗に終わったとされる。
2001年9月11日からのアメリカ同時多発テロ事件に引き続き、粉末化した炭疽菌芽胞が郵便物として送付され、肺炭疽が発生した。
[編集]
生物学的分類と特徴

炭疽菌の構造炭疽菌(Bacillus anthracis)は、バシラス属に分類されるグラム陽性の芽胞形成桿菌である。種小名のanthracisは「炭疽(anthrax)」を意味する。この語はギリシャ語の「炭(ἄνθραξ)」に由来し、炭疽の病変部が炭のような黒色に変色することにちなんで付けられた。

大きさは約 1 - 1.2 µm × 5-10 µmで、病原性細菌の中では最大の部類である。顕微鏡で観察すると、個々の桿菌は円柱状で、竹の節を直角に切り落としたように見え、これが直線上に配列した連鎖桿菌として観察される。その周囲を莢膜(きょうまく)と呼ばれる構造が取り囲んでいる。炭疽菌の莢膜は、他の細菌が持つものと比較すると境界が鮮明である。鞭毛や線毛は持たない。

炭疽菌は芽胞形成菌で、生育環境が悪化すると菌体の中央付近に卵円形の芽胞を形成する。芽胞は熱や化学物質などに対して極めて高い耐久性を持つ構造体であり、このため炭疽菌が生息している環境から菌を除去することは極めて難しい。第二次世界大戦後に連合軍が行った炭疽菌爆弾の実験では、少なくとも投下後40年以上にわたって、多数の炭疽菌が土壌に残存しつづけるということが判明した。

2002年以降、細菌の種の分類にはDNA - DNA分子交雑法を用いた遺伝学的な方法が採用されているが、この方式に従うと、炭疽菌(B. anthracis)とセレウス菌(B. cereus)、卒倒病菌(B. thuringiensis)の3種の遺伝子はそれぞれ70%以上の相同性を持つため同一の生物種という扱いになる。しかしながら医学的な観点からは、この3者が混同されたときの危険性が大きいため、医学における重要性を考慮してそれぞれ別々の種として命名・分類されている(危険名と呼ばれる)。

炭疽菌は土壌に生息、あるいは芽胞の形で存在し、またヒツジなどの動物の体毛にも土壌由来の菌や芽胞が付着して存在しており、世界中で分離される普遍的な自然環境の常在細菌である。ただし、特に炭疽の発生が多い地帯は世界に2カ所存在しており、この地帯では炭疽菌の生息密度が特に高いと考えられている。一つは、スペイン中部からギリシャ、地中海を挟んでトルコ、イラン、パキスタンに至る地帯であり、特にトルコからパキスタンにかけては炭疽ベルトと呼ばれることがある。もう一つは、赤道アフリカ地帯である。また、ジンバブエでは1979年に記録的な炭疽の地域的流行が発生して以降、高度に炭疽菌汚染した地域になっていると言われている。

[編集]
病原性
医療情報に関する注意:ウィキペディアは百科事典であり、一般的な説明をするにとどまります。ご自身の健康問題に関しては、医師等の専門家に相談してください。
詳細については炭疽症の項で述べる。

炭疽菌は土壌中の常在細菌であるが、家畜やヒトに感染して炭疽(症)を発症させる。そのもっとも多い例は、皮膚の傷口から侵入して皮膚で発症する皮膚炭疽である。この疾患は特に中世ヨーロッパでは、家畜の屠殺・解体・鞣革を行う者に多く見られた。また炭疽菌の芽胞が呼吸器を介して肺に到達すると、肺炭疽と呼ばれる極めて重篤な疾患を起こす。肺炭疽は羊毛を扱う者に見られた疾患である。また稀な例として、炭疽により死亡した動物の肉を食べたとき、腸管の傷口から侵入して起きる腸炭疽を起こす場合もある。いずれの場合もヒトからヒトへの伝染は起きない(言い換えれば、危険な感染症だが伝染病ではない)。炭疽は人獣共通感染症であり、日本では感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症新法)において、四類感染症に指定されている。

[編集]
治療
グラム陽性桿菌であり、多くの抗生物質に感受性(抗生物質による治療が有効)で、薬剤耐性を自然に獲得したものは稀であると言われる。しかし、生物兵器として開発されているものには薬剤耐性遺伝子を組み込んだものが存在する可能性が指摘されている。なお、日本ではペニシリン系抗生物質が、アメリカではシプロフロキサシン、ドキシサイクリンが炭疽症治療の第一選択薬とされる。

[編集]
予防
動物とヒトにおいて、それぞれ有効なワクチンが開発されている。動物に対しては弱毒生菌ワクチンが用いられる。これはパスツールが開発したものをヒントに、スターンが1930年代に作り出したものである(炭疽菌#細菌学における歴史的位置付け|細菌学における歴史的位置付け、莢膜の節を参照)。一方、ヒトに対しては成分ワクチンが用いられており、これは外毒素の一つである防御抗原(PA)を用いたものである(防御抗原を参照)。しかし、いずれもヒトに対する副作用や有効性では問題が残っているため、新しいワクチン開発が続けられている。なお日本においては、ヒトに対する成分ワクチンが認可されていないため、生物テロに対する備えが不十分ではないかと指摘されている。

[編集]
病原因子
炭疽菌の病原性に関わる因子として、莢膜と3種類の外毒素が知られている。これらは、それぞれ莢膜プラスミド(pXO2)、毒素プラスミド(pXO1)と呼ばれる、炭疽菌ゲノムとは独立したプラスミド上に存在する遺伝子から作られる。

[編集]
莢膜
炭疽菌の莢膜は、ポリグルタミン酸ペプチドを主成分とする。バシラス属以外の細菌で莢膜を持つものには多糖類を主成分とするものが多く、この点は炭疽菌莢膜の特徴の一つであるといえる。またこの分子を構成するアミノ酸が、L体だけでなくD体の光学異性体(D-アミノ酸)を多く含んでいる点でも特徴的である。一般に莢膜は、細菌が動物の体内に侵入した際、白血球の貪食などから逃れる役割を担っており、炭疽菌の莢膜もこの役割を果たしている。莢膜によって宿主の免疫機構による排除を逃れて、生体内への定着が容易になると考えられている。

1930年代にスターンが開発して以来使用されている炭疽ワクチンは、培養を繰り返すうちに莢膜を失った弱毒生菌ワクチンであり、これは莢膜をコードしているプラスミド pXO2 が欠落したものである。莢膜を失った炭疽菌は白血球による貪食などを受けやすくなって弱毒性になるため、比較的安全に炭疽菌に対する免疫を獲得することが可能であるが、ヒトに対して十分安全とは言えないため、この炭疽ワクチンは動物にのみ用いられている。

[編集]
外毒素

炭疽菌外毒素の作用機序炭疽菌は3種類の毒素タンパク質を菌体外に分泌しており、これが炭疽によって起こる諸症状の直接の原因になっている。外毒素はそれぞれ、防御抗原(PA, protective antigen)、浮腫因子(EF, edema factor)、致死因子(LF, lethal factor)と呼ばれている。これらをコードする遺伝子はすべて毒素プラスミド pXO1上に存在する。

[編集]
防御抗原
防御抗原(PA)は、標的になる細胞の細胞膜に存在する受容体タンパク質(炭疽毒素受容体、anthrax toxin receptor, ATR)と結合する性質を持つ。PA自身も神経などの機能を阻害する毒素としての働きを持つが、それ以上に、浮腫因子(EF)と致死因子(LF)を標的細胞内に送り込む役割が大きい。

PAは細胞膜上の受容体に結合した後、細胞膜表面にあるフリン(furin)と呼ばれるプロテアーゼによって切断を受けて活性型になる。活性型になったPAは、互いに相互作用して集まり、細胞膜上でPAが7つ集まった7量体を形成する。PAの7量体は、細胞膜上の脂質ラフト(細胞膜を構成する脂質分子のうち、ある種のものが集まった部分)に移動し、そこからエンドサイトーシスの機構によって、細胞の内部にエンドソーム小胞として取り込まれる。さらに7量体になったPAは、EFまたはLFと結合する活性を持っているため、PAが細胞内に取り込まれると同時にEFやLFが細胞内に取り込まれる。細胞内に取り込まれたエンドソームは、異物を分解する酵素などを含んだリソソームと融合するが、このとき小胞内のpHが酸性に変わる。この刺激によって、PA7量体はエンドソーム膜に入り込み、イオンチャネル分子として働くようになり、細胞質にEFやLFが放出される。

すなわち、PAは炭疽菌によって毒性が現れる際、もっとも重要な役割を担う分子だと言える。このことは、逆に言えば、PAの働きを阻害することで炭疽菌による発病を治療、あるいは予防することが可能であるとも言える。そもそもPAは「防御抗原」の名が示すとおり、このPAに対する抗体が炭疽から宿主を防御することから名付けられたもので、唯一ヒトに対して用いることが可能な炭疽ワクチン(成分ワクチン)として利用されている。ただしPA自体にも弱い毒性があり、一過性に神経や心臓血管の機能障害が現れる。この理由はよく判っていないが、7量体PAがチャンネル型の分子として細胞膜の透過性を高めるためだという説がある。この毒性による副作用が現れること、また十分な免疫を獲得するには複数の接種が必要なこと、免疫の持続時間が比較的短いことなどから、より優れた代替ワクチンの開発が続けられている。

[編集]
浮腫因子
浮腫因子(EF)は、カルモジュリン依存アデニレート・サイクラーゼ活性を持つ毒素である。細胞質にはカルモジュリンが存在するので、EFは上述したPAの働きによって細胞質内に取り込まれた後、アデニレートサイクラーゼとしてアデノシン三リン酸(ATP)からサイクリックAMP(cAMP)を生成する。これによって、細胞質内のサイクリックAMP濃度が上昇すると、上皮細胞などでは細胞膜のイオンチャネルが活性化して細胞内からの電解質や水の分泌が起こり、その結果、組織レベルでは浮腫などの病変が現れる。

[編集]
致死因子
致死因子(LF)は、メタロプロテアーゼ(金属プロテアーゼ)としての活性を持ち、亜鉛イオン(Zn+)を触媒として、特定の標的タンパク質を分解する。LFもまた、上述したPAの働きによって取り込まれた後、細胞質でプロテアーゼとして働くが、LFの標的分子はMAPKK(MAPキナーゼキナーゼ)と呼ばれる、重要な細胞内シグナル伝達(情報伝達)に関与しているタンパク質リン酸化酵素である。MAPKKは、MAPK(MAPキナーゼ)をリン酸化し、さらにMAPKが他の多様なタンパク質(c-Mycなど)をリン酸化することで、細胞の増殖や生存に必要なタンパク質の合成を制御している。LFはこのMAPKKを分解してしまうため、LFが作用した細胞は死んでしまい、その結果、組織レベルでは出血や壊死などの病変が現れる。炭疽症のときに見られる病巣部の黒変も、このLFの働きによって組織が出血性壊死を起こすためである。
原生生物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
原生生物界
分類
ドメイン: 真核生物 Eukaryota
界: 原生生物界 Protista 

原生生物(げんせいせいぶつ)とは、生物の分類の一つ。真核生物のうち、菌界にも植物界にも動物界にも属さない生物の総称。

もともとは、真核で単細胞の生物、および、多細胞でも組織化の程度の低い生物をまとめるグループとして考えられたものである。

目次 [非表示]
1 内容
2 歴史
3 五界説以降の展開
4 外部リンク



[編集]
内容
単細胞のもののほかに、多細胞であっても、ごく小さくて微生物として扱われるものが多いが、褐藻類(褐藻植物門:コンブなど)、紅藻類(紅藻植物門:テングサ、アマノリなど)のような大型になるものもある。また、細胞性粘菌のように、単細胞で独立して食物を摂取する期間と、多細胞の子実体を形成する期間の双方を生活史のうちにもつ生物も属している。

原生生物界には以下の様な生物が含まれる。

褐藻類、紅藻類といったすべての真核藻類
鞭毛をもつ菌類的生物(卵菌類・いわゆるミズカビ類など)
粘菌、細胞性粘菌など変形菌門(旧)に所属していたもの
アメーバ、ゾウリムシなどの原生動物

原生生物は水中や水を多く含む土壌中に生息している。陸上でも、ひなたや岩の上など、乾燥の強い場所でも、地衣類のように他の生物と共生したり、乾燥しているときは休眠して、水があるときだけに活動するなどの方法で生活しているものがある。他の生物に寄生して生活する種もいる。動物の腸などの中にも、特殊なものが生息しているが、寄生の場合、共生関係がある場合、不明の場合など、様々である。腸内や砂泥層の内部は、有機物が豊富で、酸素がきわめて少ない。これを、植物出現以前の地球上の環境に近いとみなして、そのような条件でくらしていた生物の、現在における逃げ場であると見る向きもある。




[編集]
歴史
古くから、生物を動物界(動いて餌を採るもの)と植物界(動物ではないもの)に2分する二界説が生物の分類法の主流であった。この場合、菌類は当然のように植物と考えられており、このような判断で、特に問題は生じていなかった。

この状況はレーウェンフックが微生物を発見したことで大きく変化した。彼の発見の後、多くの研究者が様々な微生物を発見していった。それらの生物のなかには、アオミドロのように、動かず、光合成している植物と見なせるもの、ゾウリムシのように活発に運動し、餌を食べる動物とみなせる種、カビのように胞子を形成する菌類とみなせる種など、それまでの枠におさまるものもあった。

ところが、たとえばミドリムシのように、光合成能力がありながらも鞭毛で運動をする動物とも植物ともつかないもの、変形菌のように胞子を作る菌類のようでありながら、栄養体はアメーバ運動をして餌を食べる動物のようなもの、珪藻のように、固い殻を持ち、光合成をしながら、移動能力があるもの、といった風に、これまでの枠組みにおさまりきれない生物が多数発見された。


19世紀に入り、ヘッケル(Ernst Haeckel)は動物とも植物ともとれる原始的な生物を3番目の生物界、原生生物界として分離し、動物界、植物界、原生生物界の三界とした(三界説)。 当初ヘッケルが原生生物界に分類した生物は細菌類、真菌類、単細胞藻類、原生動物、海綿であったが、後に単細胞生物に限定した。

1959年、ホイタッカー (R.H.Whittaker)は生物をモネラ界、原生生物界、植物界、菌界、動物界の5界に分類する五界説を提唱した。 彼の考えは、生物の進化に大きく3つの方向があると考えたことである。一つは、光合成をして、動かずに生活する植物の方向、2番目に運動して餌を食べる動物の方向、3番目に、体の表面で有機物を溶かして吸収して生活する菌類の方向である。 彼はまず、細胞の構造が異なる原核生物を区別し、前述の3つの方向に進化して、よく発達した構造を持った仲間をそれぞれに植物界、動物界、菌界としてまとめた。そして、単細胞の生物では、それぞれが3つのどれかの方向に進化してきたのだとしても、その程度が低いので区別が難しい状態であるとして、まとめて原生生物界と名付けた。つまり、系統的にまとまっていると見なしたわけではなく、発達段階で分けたということである。

当初、原生生物界は単細胞生物のみを含んでいたが、その後ホイタッカーやマルグリス (マーギュリスL.Margulis)らによって、真核多細胞生物を含めた再定義がなされた。この定義によると原生生物は「胚を作らず、組織の分化または形成も行わず、波動毛(鞭毛)をもつ場合は微小管が9+2構造に配列する真核生物」と定義される。従来、 原生生物界の学名はProtista(プロティスタ)とされてきたが、上記の真核多細胞生物を含めた分類では学名をProtoctista(プロトクティスタ)とすることがある。

[編集]
五界説以降の展開
現在、五界説はひとまず標準としての位置を保っている。 しかしながら、近年、鞭毛根構造などの細胞内の微細構造や遺伝子の解析を通じて生物間の系統を解析する方法の進歩により、原生生物の中でも類縁関係の検討が進んでいる。また、細胞内共生説が想定していなかった、真核細胞間での細胞内共生の発見も大きな影響力を持っている。

そうした中、キャバリエ=スミスは八界説を提出し、原生生物界をさらに三つに分けた。 それによると、褐藻植物を含む黄色植物などの藻類群は、真核細胞由来の葉緑体を持ち、さらに葉緑体を持たない卵菌類、ラビリンチュラ類とともに、鞭毛が前方に向かうマスチゴネマを持つ羽型のものと後方に向かう鞭型のものの2本がセットになっている点で共通し、これらが単系群をなすということで、さらに体制に共通点があるハプト藻類とクリプト藻類を合わせ、これをクロミスタ界として独立させた。また、微胞子虫を含むいくつかの単細胞生物はミトコンドリアを持たず、これをミトコンドリアが共生する以前の真核細胞生物の生き残りと判断し、これをアーケゾア界とした。残りの原生生物界のものは、原生動物界という名を与えている。

ただし、アーケゾア界には疑問の声もあり、ミトコンドリアを持たないのは、二次的に退化したのだとの指摘がある。キャバリエ=スミス自身もその後撤回している。しかし、従来の五界説では落ち着かないのは確かで、いずれにせよ、今後とも、この分野では大きな変動が起きることと思われる。
真正細菌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
真正細菌



分類
ドメイン: 真正細菌(Bacteria)


本文参照

真正細菌 (しんせいさいきん、英語 bacteria(複数) ; bacterium(単数) ; eubacteria(複数) ; eubacterium(単数)) は生物分類上のドメインの一つであり、古細菌が持たないアセチルムラミン酸を含んだ細胞壁を持つ原核生物のこと。細胞外マトリクスの構造の違いによってグラム陰性菌とグラム陽性菌に分類される(グラム染色)。植物や動物とは異なりきわめて多様な代謝系や栄養要求性を示し、生息環境も生物圏と考えられるすべての環境(主として水圏)が含まれる。また物質循環においても有機物の分解過程という重要な位置を占めている(硝化、脱窒過程など)。

食品関係においてはチーズ、納豆、ヨーグルトといった発酵過程において微生物学発展以前から用いられてきた。また、腸内細菌群は食物の消化過程には欠かすことのできない一要素である。また一部のものは病原細菌として、ヒトや動物の感染症の原因になる。対立遺伝子を持たず、遺伝子型がそのまま表現型をとり、世代時間が短く変異体が得られやすい。あるいは形質転換系の確立などもあいまって近年の分子生物学を中心とした生物学は真正細菌を中心に発展してきた。大腸菌などは分子生物学の有用なツールとして現在でも頻繁に使用されている。このように、人とのかかわりの深い原核生物である点でも古細菌とは異なる。

真正細菌という呼称は古細菌の概念を提唱したカール・ウーズが、原核生物における古細菌との違いを際立たせるために提唱した用語Eubacteriumの翻訳である。しかし、3ドメイン説が採用される際には、真正細菌に対してDomain Bacteriaが用いられ、以降「バクテリア」は、旧来の古細菌と真正細菌を含む「細菌」の訳語であると同時に、古細菌を含まない「真正細菌」のみのグループを指す言葉にもなるという、混乱しやすい状況になっている。また旧来の細菌の中で、古細菌は例外的な(非典型的な)特徴を持つ細菌と考えられ、それに対して真正細菌は典型的な細菌だと考えられていた。このような理由から、真正細菌を単に「細菌」「バクテリア」と呼ぶことも多い。なおしばしば「真性細菌」と誤表記されることがあるが、「真正細菌」という表記が正しい。

目次 [非表示]
1 真正細菌の特徴
2 生息環境
3 物質循環と代謝の多様性
3.1 窒素循環
3.2 硫黄循環
4 分類
4.1 栄養的分類
4.2 命名と分類単位
4.3 ドメイン細菌(B.)の主な分類
5 関連項目



[編集]
真正細菌の特徴
カール・ウーズが古細菌の概念を提唱する以前は原核生物と真核生物の生化学的な違いについて論じられるのみであった。それらには以下のようなものがある。

細胞内単位膜系(小胞体、核膜、葉緑体、ミトコンドリア、ゴルジ体、リソソーム)が存在しない。
染色体数は原則として一つである。
ヒストンを含むクロマチン構造が存在せず、染色体は細胞膜に付着している。
有糸分裂を行わない。
リボソームが70S(大サブユニット:50S、小サブユニット:30S)である。
微小管を持たない。
細胞壁にペプチドグリカンを持つ。
エンドサイトーシスを行わない(物質の取り込みは基本的に細胞外で分解したものを低分子にして取り込んでいる)。
細胞質流動を行わない(細胞内における物質の移動は基本的に拡散による)。
真核生物との具体的な違いについては、現在でも上記の項目が挙げられるが、もうひとつの原核生物である古細菌の提唱によって、真核生物との違いを論じるのみでは不十分である。古細菌と真正細菌の違いについては以下のようなものがある。

グリセロールに脂肪酸がエステル結合した脂質骨格を持つ(脂質)。また、グリセロールに脂肪酸の結合する位置が真正細菌ではsn-1,2位である(古細菌はすべてsn-2,3位)。
細胞壁にムレインが存在する。
抗生物質感受性は古細菌とは異なり明らかに真核生物感受性のものと区別できる。
翻訳開始にフォルミルメチオニン-tRNAを使用する。
DNA依存RNAポリメラーゼのサブユニット構成が単純である(β’βασ構造)。
アミノ酸や遺伝子配列は、ある場合は古細菌と相同性を示し、ある場合は真核生物と相同性を示す。また、どちらにも相同性を示さないケースもある。 本文は古細菌より改変した。詳しくは当該記事参照。
[編集]
生息環境
生物圏とされている、上空8000mまでの大気圏、地下5000mの岩盤、水深11000m以上の海底、南極の氷床などといった、我々には生育困難な環境からも生育ないし存在が確認されている。ただし、生育には必ず水分が必要であり、乾燥に対してはきわめて弱い。しかしながら一部の細菌は芽胞という乾燥に強い形態をとり、風や水などで容易に伝播されるので、結果として人工的に作り出さない限りは細菌の存在しない状態を作り出すことは困難である。

また多細胞生物体内部や表面にも多数の細菌が付着ないし生育している(共生)。ただし、健康な生物体の血液中、筋肉、骨格など消化管以外の臓器からはほとんど検出されず、無菌に保たれる。消化管においては食物の分解プロセスの一部を担っている。このような共生の例はルーメンやマメ科植物の根圏における窒素固定菌の共生などに見ることができる。

生物量(バイオマス)も相当量存在すると考えられており、土壌4000m2あたり2トンの真菌を含む微生物を有していると考えられている。また海洋においては、栄養状態にかかわらず1mlあたり50細胞程度の真正細菌が存在しており(沿岸や生物の死体周辺ではmlあたり105細胞以上生息している)、海洋ひとつとってみても地上の真核生物量をはるかに凌駕する計算がなされている。また地殻中5000mまでも生物圏に含めるとすれば、地球上の生物量のほとんどが原核生物に占められる。

[編集]
物質循環と代謝の多様性
前項にてあげたが、真正細菌は生物量としても真核生物を凌駕している。またその呼吸活性においても同様で、多細胞生物体と細菌1gの呼吸活性を比較すると細菌のほうが数百倍大きいと言われている。肥沃な土壌4000m2あたりの細菌の呼吸活性は数万人の人間に等しいとされる。これは細胞が小さく体積あたりの呼吸活性を示す表面積の割合が大きいこと、世代時間が短いことがその要因であろう。呼吸速度(炭素、水素、酸素の循環)のみならず、生物を構成している窒素、硫黄の地球全体の物質循環に寄与している。

[編集]
窒素循環
窒素は大気組成の主たる構成要素であるが、不活性な気体である。しかしながらタンパク質のアミノ基に含まれるなど生物体の構成要素として非常に重要である。植物は無機態のアンモニアおよび硝酸同化、有機物態窒素の利用が可能であるが、気体の窒素を利用できるのは唯一窒素固定菌のみである(窒素固定)。また、有機体窒素のアンモニア化、アンモニアを硝酸まで酸化する硝化過程、硝酸塩を気体の窒素まで還元する硝酸還元(脱窒)過程など、窒素の循環に多様な代謝系を持って循環に寄与している。

[編集]
硫黄循環
硫黄は主に地殻中に豊富に存在するが、元素状硫黄は不溶性で利用が困難である。しかしながら有機物中に存在する硫黄は反応性が高く重要なアミノ酸に含まれている(メチオニン、システインなど)。硫酸塩のみが植物によって同化されるが、有機物態硫黄を分解の分解(最終産物は硫化水素)、硫黄酸化(硫化水素から硫酸塩に戻す)、硫酸還元(硫酸塩を異化的に還元する)などは細菌に特有な代謝系である(古細菌にもこのような代謝系を有するものが見つかっている)。

[編集]
分類
古細菌を含めた原核生物の分類は、形態や表現型のみを持って分類を行うことができる多細胞生物体の分類学とは方法を異にする。原核生物は染色体を1つのみ所持し、対立遺伝子を持たず、かつ、無性的に増殖するために交配を必要としないので動植物に適用されるべき種の概念は当てはまらないことになる。相同組み換えは人間の観察する範囲内において確認されるものの、自然界における頻度を考えると、進化に関与しているかどうかは疑問である。また微生物の個体というものを主として認識するのは困難であり、微生物学的種として認識されているものは同じ遺伝子を持つクローンの集合体(菌株の集団)である。

このような多分子系の実験にて表れる表現形質を徹底的に調べて微生物の種を分類していくのが微生物学における分類学である。そのパラメータとしては、以下のようなものがあげられる。

グラム染色(陰性か陽性か)
構造的あるいは解剖学的性質(直接観察)
生化学的性質(脂質の構造など)
生理学的性質(最終電子受容体など代謝系)
生態学的性質(生育環境、他微生物や宿主との相互作用など)
特に、動植物においては最も重要な構造的解剖学的性質の決定が微生物では困難なために(個性を見出すことが困難なために)、3つの機能的属性に依存して分類が行われる。グラム染色法はその細胞外マトリクスへの取り込み機構は明らかになっていないが、明らかにグラム染色以下の形質を反映するために現在でも有用なツールのひとつである。古細菌概念提唱前はこの点で混乱を招いたことがあったが、現在ではほぼ解決されている。

また近年の分子生物学的発展に伴い、適用の難しかった数値分類学的な(いわゆる客観的な)分類法が重要になってきている。特に16S rRNA系統解析やDNA - DNA分子交雑法といったメソッドは新種認定のための必須事項である。塩基配列決定が困難であった時代はGC含量によって大まかな分類が可能と考えられてきたが、現在でも重要なデータであることは確かだが、含量によって分類以外の特徴を示すことができない。

なお、微生物の新種の記載をおこなっている科学雑誌International Journal of Systematic Evolutionary MicrobiologyではDNA - DNA交雑法を行うことが近縁な2種を分類する最も根拠ある実験としている。

[編集]
栄養的分類
微生物の代謝にて注目すべき点は、エネルギー源および炭素源である。それぞれの資源としてどのようなものを利用できるかによって以下のような分類がある。

エネルギー源
光合成生物:光をエネルギー源として利用できる(光リン酸化を行なえる)
化学合成生物:化学エネルギーをエネルギー源として依存する(酸化的リン酸化を行なう)
炭素源
独立栄養:炭素源として二酸化炭素(CO2)を利用できる
従属栄養:炭素源として有機物に依存する
混合栄養:独立栄養および従属栄養の混在したもの
これらの、エネルギー源および炭素源の組み合わせによってすべての生物の栄養要求性を説明できる。動物は主として有機物を酸化してエネルギーを得る化学合成従属栄養生物であり、植物は光エネルギーにて二酸化炭素を還元して固定する光合成独立栄養生物である。しかしながら微生物には、これら以外にも光合成従属栄養性と化学合成独立栄養性を示す生物群がいる。

この二つの特徴ある生物群のうち、化学合成独立栄養性を示すものについては物質循環の中でも重要な役割を担っている。また硫黄酸化細菌、水素細菌などは太陽エネルギーに依存しない生態系である深海熱水孔や地下生物圏での一次生産者の役割を果たしていると考えられている。なお、本項の詳しい説明は栄養的分類を参照。

[編集]
命名と分類単位
命名は基本的にリンネの二名式命名法に従って行っている。微生物においては特に属名および種名が基本の呼称とされる。分類には属以上の単位として科、目、綱、門、界、ドメインなどが与えられているが、属の割り当てが微生物の中では最も重要である。属以上の分類単位はあくまで他の微生物の相対的地位であり、生物そのものの表現型を示すものではない(微生物はそれほどまでに多様でいまなお分類は混乱している)。

したがって、属以上の分類単位を個々の微生物に適用する試みは困難かつ失敗を招いてきた歴史があり、現在では細菌を『群』(group)に分け、そこから属レベル(中には目、科レベルでの分類も必要だが必ずしもそうではない)の分類を行う方法が主流である。群による分類法も絶対的なものではなく亜群(sub group)を当てはめるなど改変を迫られている。

細菌分類の大綱として最も有名なものにBergey's Manual of Determinative Bacteriologyがある。現在では、Bergey's Manual of Systematic Bacteriologyという名前に変わっている。また、ドイツ刊行のThe Prokaryotesも総ページ数4000を超える大著となっている。大方支持されているのはBergey's Manualのバージェイ式分類であり、それにのっとった分類がなされている。
Xbox
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
Xbox(エックスボックス)は、世界最大のコンピュータソフトウェア会社であるマイクロソフト(MS)が開発した家庭用ゲーム機である。アメリカでは2001年11月15日に、日本では2002年2月22日に発売された。

目次 [非表示]
1 概要
2 仕様
3 沿革
3.1 発売までの経緯
3.2 日本での不振
3.3 Xbox Live
3.4 その他
3.5 Xbox 360
4 関連項目
5 外部リンク



[編集]
概要
Intel社製Pentium III700MhzCPUをベースとした搭載(L2キャッシュが128KBとなる)。また、8GBのハードディスクやDVD-ROMドライブ、ネットワーク端子も搭載し、パソコンに似た構造となっている。コントローラポートは形状こそ異なるがUSB規格が使われている。

オペレーティングシステムとしてMicrosoft Windows 2000のカーネルをごく軽量化したものを搭載し、APIにはDirectXを採用。

[編集]
仕様
CPU : Intel Pentium III 733 MHz
グラフィック : NVIDIA社製 XGPU(X-Chip) 233MHz (GeForce3の改良版)
ポリゴン描画能力 : 1億2500万ポリゴン/秒
メモリ : DDR SDRAM 64 MB(CPU,GPU共用)
メモリ帯域幅 : 6.4GB/秒
記憶装置 : 5倍速DVD、8GBハードディスク、8MBメモリーカード
サウンド機能 : 256チャンネル
インターフェース : コントローラポート×4、10/100 Mbpsイーサネットポート
最大解像度 : 1920×1080
電源 : 100V,50/60Hz 消費電力 : 絶対最大定格 200 W
重量 : 3.86 kg
外形寸法 : 324×265×90 mm
サウンド、HDD/DVDインターフェイス、イーサネットはnForceのMCPに相当する集積チップのMCPXが処理する。

[編集]
沿革
[編集]
発売までの経緯
当初マイクロソフトはセガのドリームキャストに技術協力していたが、ドリームキャストが商業的に失敗した後、MS自身が巨大産業であるゲーム業界に参入するという噂が流れ始めた。この背景にはセガとの路線対立や、ソニー・コンピュータエンタテインメントや任天堂に提携を求めて断られたことがあると言われている。

2000年3月、日本でプレイステーション2(PS2)が発売されてからわずか数日後にMSがゲーム機参入を発表。当時ソニーグループはPS2でWintelに挑戦すると宣言しており、ソニーがトップを占めるゲーム業界にMSが逆に挑戦するという構図になったことで話題を集めた。噂の段階から開発コードネームとして浸透した「X-BOX」が実際の名称にも使われることとなった。製品仕様や発売前の技術デモなどは徹底的にPS2を意識したものであったと考えられる。

発売当時は「PS2の3倍の性能」を謳い、グラフィック性能の高さで注目を集めたが、PS2及びニンテンドーゲームキューブと同じ世代の製品と位置付けられている。

[編集]
日本での不振
日本に他国メーカーのゲーム機が上陸した例は3DOなどごくわずかのため、Xboxの上陸は「黒船」に例えられ話題を集めた。2002年2月22日の日本発売に合わせてビル・ゲイツが来日し、「笑っていいとも!」に生出演したり、元X JAPANのYOSHIKIを起用したりと大々的な宣伝を行った。しかし、本体の大きさ・デザインやゲームソフト自体の内容などが日本人の生活環境に合わないこと、日本ではXが×(バツ・駄目)のイメージであることなどが指摘され、話題性に反して静かな出足となった。

日本で発売直後、プレイ中にDVDやCDのメディアに傷が付く問題が発覚。米国などでも同じ仕様のハードが発売されており特に問題にならなかったようだが、日本国内ではクレームが相次いだ。傷物を嫌う日本人の消費者心理を読み誤ったMSの対応のまずさも手伝い、普及の伸び悩みに拍車をかけることになる。その後マイクロソフトは無償での本体修理とメディア交換に応じた。

他国では一定の成功を収めたものの、日本においてはPS2やニンテンドーゲームキューブといった日本メーカーの強力なライバル製品がすでに市場を押さえており、Xboxのシェアはごくわずかにとどまっている。

Xboxは開発環境にDirectXを採用し、開発のしやすさでソフトメーカーの関心を集めた。コナミやカプコンのようにハード発売前の早い段階から本格参入を表明するメーカーもあったが、販売台数の伸び悩みで方針転換を余儀なくされた。

日本国内ではかつてのPC-FXやドリームキャストのように、一部マニア向けのゲームソフトが多くなっている。他国でヒットした作品も日本では「洋ゲー」と呼ばれ、幅広い層からの支持は受けにくい。日本国内で10万本以上を売り上げるヒットとなったのはテクモの「DEAD OR ALIVE」シリーズのみであり、ハードが売れずキラーソフトが生まれない悪循環に陥っている。

[編集]
Xbox Live
Xbox Liveというオンラインサービスを、2002年11月に米国、2003年1月に日本、同3月に欧州各国で、それぞれ開始した。標準本体のみでオンラインサービスに接続できるのが最大のセールスポイントであった。(その後発売されたPS2の新型機種でもLAN端子を標準装備し本体のみで接続できるようになった。)

しかしオンラインゲーム普及のペースが予想より遅かったことや、やはりキラーソフトが存在しないことで、ライバル機に勝る要素にはなっていない。また、他機種がウェブマネーや口座振替などの比較的平易な決済方法を取り入れているのに対し、Xboxはクレジットカード決済のみとなっており、まだまだゲームに対する風当たりの強い世の中で、「ゲームをするがためにクレジットカードを貸してくれる理解ある親を持つ子供」と「暇のある社会人」という、どうみても少ないであろう層を狙ったとしか考えられない方策により、Xbox Live不振に一層の拍車をかけており、その「不信」は、キラーソフトとして期待されていたトゥルーファンタジー ライブオンラインの開発中止により頂点に達する。

Xbox Liveは次世代機Xbox 360にも共通して提供されている。

[編集]
その他
日本において、発売当初の希望小売価格は34,800円であったが、他社と同様、激しい価格競争にさらされた。その後数度の価格改定を経て、2004年5月より発売されている「Xboxプラチナパック2」においては、ゲームソフト2本、追加のコントローラ、DVDビデオ再生キットなどを追加した希望小売価格は19,000円である(税別)。

北米をはじめ日本以外の地域ではプレイステーション2に次ぐシェアを獲得し、ニンテンドーゲームキューブに比べて販売台数は多いとみられる。「Halo」「Halo 2」など爆発的にヒットしたキラーソフトも生まれた。2005年、日本国外で初めて関連事業の黒字利益を達成した。

2005年2月17日、MSは2003年10月23日以前に製造された1410万台の製品について、電源コードが異常発熱して火傷を負う人が発生していると発表し、電源コードの無料交換に応じるとの対策を取った。一部報道によれば、この時点での日本国内の出荷台数は45万台とされた。

[編集]
Xbox 360
2005年11・12月に後継機となるXbox 360が発売された。ハードウェアの互換性はないが、ソフトウェアエミュレータにより一部のXboxタイトルがプレイ可能である。

ライバルであるプレイステーション3に先駆けて発売された次世代機として注目を集めたが、日本では発売当初の売上がXboxを下回っている。

なお日本ではXbox 360の発売に伴い、Xbox向けの新作ソフト発売はほとんど途絶えた。ハードの代替わりの時期には旧機種向けソフトがしばらく発売されるのが一般的だが、Xboxの場合は販売台数が少ないために直ちに切り捨てられた形となった。
合金
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
合金(ごうきん、Alloy)とは、金属元素に、1種類以上の金属元素または非金属元素を意識的に添加することによって構成される物質のうち、金属的性質を持つものの総称である。【通常使用する金属はわずかな不純物を含む。しかし、意識的に添加しない不純物についてを合金元素としては考えない。】合金製造の目的は、単純な金属では引き出しえなかった性質が具現され、特に鉄合金はその多彩な種類で他合金を圧倒し、鋼(はがね)とも呼ばれる。

例えば、黄銅は銅(金属元素)と亜鉛(金属元素)の合金で、鋼は鉄を主体とした合金という意味がある。しかし鋼の場合、過剰あるいは僅少な炭素添加のものは歴史的に鋳鉄、純鉄と呼ばれる。鋼の原義は0.6mass%を中心にその前後の炭素量のものを鋼(刃金)と呼び、金属組織的にはマルテンサイト構造と呼ばれるものであったが、ステンレス鋼(「こう」と呼ぶ。単純に「鋼」であれば「はがね」と呼び、「〜鋼」となっている場合「〜こう」と呼ぶ。)が開発されるにあたり、炭素を必須とした合金以外でも鋼と呼ばれるようになった。しかしこれは鉄を主体とした合金であることには変わりなく、鉄含有量が50%以下になると、鉄が含有されているものでも鋼ではなく合金と呼ばれる。このように歴史的紆余曲折があり鋼の定義は難しいものになっている。

金属の固溶体や、金属間化合物なども合金の範疇に含まれる。主要成分元素の数が2つなら2元合金、3つなら3元合金、4つなら4元合金・・・と呼ぶ。主体となる金属によって、合金鋼、銅合金、ニッケル合金・・・と呼ぶ。合金の作製方法には、単純に数種類の金属を溶かして混ぜ合わせる鋳造法や、近年開発されたボールミル装置を使用したメカニカルアロイングなどがある。合金の生成判断ができやすいようにと、さまざまな合金の状態図が作成されている。特に、鋼に関するFe-C系状態図は有名である。

目次 [非表示]
1 合金化の目的と概要
1.1 機械的強度の改善(析出硬化・他)
1.2 耐食性の向上
1.3 融点の低下
2 関連項目
3 合金の種類(合金名索引)



[編集]
合金化の目的と概要
[編集]
機械的強度の改善(析出硬化・他)
一般に純金属は弾性限界(永久変形が生じる応力)が小さい。というのは通常の金属結晶は不完全な部分(転位)を含んでおり、転位の移動による変形が小さな応力でおこりやすいためである。合金化によって、結晶を構成する金属元素と大きさの違う金属元素に置換させたり、結晶のなかに小さな元素を侵入させたりして、結晶のひずみを作ることによって、転位の移動をしにくくして機械的強度(硬さ、引張り強度)を向上させることができる。ジュラルミン・鋼などの合金がその例である。鋼などの機械的強度の改善の主流は、マルテンサイトという特殊な組織変化を熱処理により起こし最大5倍以上強化するが、これも合金化で達成される好例である。鋼は幅広い産業に大量に用いられる用途なので合金化による強度改善の効果の総量は計り知れないものがあり、熱処理前は比較的加工がし易いことも産業界へ多大な寄与をする。熱処理により鋼より強度増幅効果をもつ固体を人類は未だ知らない。

[編集]
耐食性の向上
金属元素のなかには、Crのように、その酸化物が、皮膜(不動態)を作り内部までの酸化の進行を防ぐ性質をもつものがあり、それらの金属の添加により耐食性のある合金とすることが行われる。ステンレスが例である。

[編集]
融点の低下
共晶をつくる合金Sn−Pbでは、それぞれの単独の金属の融点に比べて合金の融点を下げることができ、より低融点の金属をえることができる。
医学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
医学(いがく、英medicine, medical science)は、生体の構造や生理機能についての探求や、疾病の性状、原因について調査し、その診断、治療、検査、予防等についての研究診療を行う学問である。

欧米では医学を応用科学に含めるのが一般的だが、日本では日本十進分類法に見られるように自然科学に含めるのが一般的であった。

目次 [非表示]
1 歴史
1.1 西洋医学
1.2 東洋医学
2 分野
2.1 基礎医学
2.2 社会医学
2.3 臨床医学
2.4 関連分野
3 論議
4 現状
4.1 日本では
4.2 中国では
5 関連項目
6 外部リンク



[編集]
歴史
日本では、西洋的な実証主義に基づく医学を「西洋医学」、伝統中国医学の知識に基づく医学を「東洋医学」とも呼ぶ。医学と医療の年表も参照。

[編集]
西洋医学
西洋において「医」の起源は古代ギリシアのヒポクラテスとされている。その後古代ローマのガレノスがアリストテレスの哲学(学問の集大成)を踏まえ、それまでの医療知識をまとめ、学問としての医学が確立されたと言われている。ガレノスはその後、数百年ものあいだ権威とされた。

中世では、外科はキリスト教徒の職業とはみなされていなかった。病気は神の恵みであり、医療は神への冒涜とされた。当時は理容師(英Barber surgeon:理容外科医とも言われた。)によって外科手術が行われていて、これは学術的な医学が発達するまで広く行われていた。 ルネッサンス期に人体に対し実証的な研究がはじまり、それまでの医学上の人体知識は否定されていった。

日本では安土桃山時代に本格的な西洋医学が伝えられ始めたといわれていが幕末に蘭学とともに西洋医学書の翻訳などが行なわれ、明治維新後に漢方医学を廃し西洋医学を医学とした。

近年では、より厳密な実証を求めるエビデンスに基づく医療が提唱され、次第に医学界に浸透しつつある。

[編集]
東洋医学
東洋で「医」の象徴とされているのは一般に薬師如来が知られているように、元々漢方等の薬を扱っていた者によって医は行われていった。古代中国では「医」は主に道士や法師等によって伝統中国医学として発展していった。

日本でも古代より「医」は巫女、陰陽師、僧侶によって中国からが伝えられた呪術、医療が行われていた。室町時代以降は中国大陸との交易も盛んとなり、漢方が積極的に伝わっていった。江戸時代以降は、日本は独自の漢方医学を発展させ、薬学である本草学を中心に診療が行われていった。華岡青洲によって記録上世界最初となる麻酔による乳癌手術が行われたりした。

現在は中華人民共和国に中医学、朝鮮民主主義人民共和国では東医学、大韓民国では韓医学として実践されている。

[編集]
分野
研究や教育のための知識体系としての医学は、伝統的に次のように分類されている。大学医学部の組織においても、研究・教育のための人員の配置がこの分類に沿って行われる場合が多い。最近は名称が多様化しているが、実質はさほどかわりない場合が多い。

[編集]
基礎医学
人体の構造・機能、疾患とその原因など医学研究の根拠となる知見を得るための学問分野である。これらの科目は医学部、薬学部等医療系学部以外に一部の大学では生物学科でも開講している。
解剖学−組織学(ミクロ解剖学)−生理学−病理学−微生物学−生化学(医化学)−薬理学−免疫学
[編集]
社会医学
社会医学とは社会的な環境と健康について研究する医学領域。
衛生学−公衆衛生−法医学−犯罪学などが含まれる。
[編集]
臨床医学
診断や治療などに直接関連する応用的な研究分野である。
臓器別分類
循環器学−消化器学−呼吸器学−腎臓学−内分泌学−血液学−神経学−産婦人科学−泌尿器科学−耳鼻咽喉科学−皮膚科学−眼科学
解剖学的分類
胸部外科学−脳神経外科学
ライフステージによる分類
産科学−小児科学−老人医学
手法による分類
内科学−外科学−診断学−症候学−形成外科学−整形外科学−リハビリテーション医学−麻酔科学−放射線医学−再生医学−救急医学−予防医学
疾病による分類
リウマチ学−精神医学−心身医学−腫瘍学−スポーツ医学
[編集]
関連分野
医学に関連する分野には以下のようなものがある。
歯科学−薬学−看護学−心理学−健康心理学−臨床心理学−生体機能代行装置学−作業療法学−理学療法学−性科学−抗老化医学−熱帯医学−生体工学−医療機器−医学教育−医学史(医史学)−生命倫理学−医療人類学−病跡学−医療社会学−医療経済学−宇宙医学
代替医学・伝統医学
しばしば実証性に乏しいが - 西洋医学と異なる独自の理論・治療体系をもつ医学分野。国によっては医療制度に組み込まれ - 大学などで研究・教育が行われている。
伝統医学 … アーユルヴェーダ - ギリシャ医学 - 中国医学 など
代替医療 … ホメオパシー - オステオパシー - カイロプラクティック など
[編集]
論議
20世紀になり、医者は患者の健康を劇的に改善する技術の向上に力を注いだ。これは、しかしながら、心のない、機械的な治療として非難されるようになった。1970年代になると、専門的な知識を集め、1980年代にはまとまった議論となりはじめた。

最も辛らつな批判を行ったのは、イワン・イリイチ『脱病院化社会』(Medical Nemesis、1976年)であろう。イリイチの意見では、現代医療は病気を取り除く際に健康を取り戻すことをせず、結果的に健康を損なっている。人間は、この見方では一生患者なのである。他の急進的な哲学者も同様の意見を述べているが、ここまで強く主張することはない。

これらの現代医学への批判は、医学を教える大学・学校の教育課程に影響を及ぼしている。現在は教育時に医療倫理が重視され、生物心理社会的介入モデルや同様の概念などの全体論的医学の重要性を教えるようになっている。

現代医学が、多くの批判に応え切れていない現実から、代替医療に向かう多くの人がいる。これらは科学的にはまだ根拠に乏しいが、症状の改善が見られるという報告もある。

[編集]
現状
[編集]
日本では
大学医学部または医科大学校医学科を卒業すれば医師国家試験の受験資格が与えられる。東洋医学の単独の医師国家試験免許はない。日本では、医師免許があれば、西洋医学、東洋医学に分け隔てなく、医療行為を施すことが可能である。

[編集]
中国では
西洋医学専用の大学、東洋医学専用の大学があり、それぞれ国家資格がある。
栄養素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
栄養素(えいようそ)とは、生物が生存したり、成長したり、子孫を増やしたりするために必要な物質のこと。生命を維持するためのエネルギー源や、生体を構成するのに必要とされる材料、生体内での各種化学反応に欠かせない物質などである。

生物は生命維持活動、即ち栄養に必要な物質のうち、体内で合成できないか、または体内での合成のみでは量をまかないきれないものを外部から摂取しなければならない。このような物質をその生物にとっての必須栄養素という。

必須栄養素は全ての生物に共通したものではなく、それぞれの種によって微妙に異なる。例えば、多くの動物は体内でビタミンCを合成できるので外部から摂取する必要はない。ところが、人間やモルモットは体内にビタミンCを合成するための酵素を持っていない。多くの生物にとってビタミンCは必須栄養素ではないが、人間やモルモットにとっては必須栄養素である。また植物では無機塩類としてカリウムは必須であるがナトリウムは生育に必要としないものが大半である。ところが動物は神経系の作動のため、カリウムとナトリウムの両方を必須としている。

ヒトを主たる対象とする栄養学において、栄養素のうち、細胞の主要構成物質であるタンパク質、炭水化物、脂肪を三大栄養素という。三大栄養素にビタミン、ミネラル(両者を微量栄養素という)を加えたものを五大栄養素という。

通俗的には古典的な栄養学の考えに基づく初等・中等学校教育の影響もあり、タンパク質を体の素材になる栄養素、炭水化物と脂肪をエネルギー源、ビタミンを潤滑油、ミネラルを骨や歯の材料に単純化して理解することが広く行われているが、本質的にはどれも体を構成する細胞の構成物質として重要である。例えば細胞の基質はタンパク質を主成分としているが、細胞の内外や細胞内小器官を区分する構造は脂肪から合成されるリン脂質を主成分としている。細胞表面は細胞どうしが互いに相手を認識しあう標識物質で覆われているが、これは糖鎖、すなわち炭水化物で構成されている。ビタミンは細胞の中の酵素反応の潤滑油のような補助的な役割というよりもむしろ、タンパク質でできた酵素分子の中に補酵素としてはまり込んで活性中心を構成するなど、生化学的反応の主役を演じる部品を構成する、特殊な有機物低分子化合物とみなせる。ミネラルも、その多くがビタミンと同様に酵素の活性中心として酵素分子に組み込まれたり、酵素やそれ以外のタンパク質分子が機能を発現するときのスイッチの役割を果たしている。

なお、通常栄養素とは考えられていないが、水は全て生物の生命維持に必要不可欠な最も大切な栄養素といえる。
陽子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
この項目では水素の原子核であり、素粒子の一つについて説明しています。
日本の女性の名前については陽子 (人名)の項目をご覧ください。

陽子(ようし、プロトン)とは、物理学におけるハドロンの一つである。中性子とともに原子核を構成することから、これらを核子と総称する。質量1.672210x10-24gは電子質量の1836.14倍に相当する。直径は10-13cm。

電荷は+1、スピンは1/2、アイソスピンは1/2、ストレンジネスは0であり、超電荷は1/2である。アップクォーク2個とダウンクォーク1個で構成されている。水素(軽水素)の原子核は、陽子一個のみから構成される。よって、水素イオン(H+、イオン化したH)は陽子そのものである為、化学の領域では水素イオンをプロトンとよぶ。

化学的な水素イオンの性質については記事 水素に詳しい。

[編集]
歴史
陽子は1918年にアーネスト・ラザフォードによって発見された。アルファ粒子を窒素ガスに打ち込むと、水素の原子核固有の反応が検出された。窒素ガスは密閉状態にあるため、水素は窒素から分離されたに違いなく、水素の原子核は窒素に含まれていると推測した。これから、当時水素の原子核は電荷が1でありそれ以上分割することができないとされていたため、最も基本的な物質の構成要素であると結論付けた。ラザフォードは、この物質をギリシャ語の最初を表すプロトス(protos)からプロトン(proton)と名づけた。

[編集]
陽子の崩壊
標準模型によれば、陽子の寿命は無限であるとされているが、大統一理論によると、非常に長い時間をかけて崩壊することが予言されている。これを陽子崩壊(ようしほうかい)という。

神岡鉱山にカミオカンデが作られた目的の一つはこの陽子崩壊を観測することである。スーパーカミオカンデを含めた実験結果から陽子の寿命は少なくとも1033年以上であることがわかっている。

大統一理論によると、陽子は主に次式のように崩壊する。



しかし現在に至るまでこの崩壊現象は観測されていない。
触媒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
触媒(しょくばい、Catalyst)とは、特定の化学反応を促進する物質で、自身は反応の前後で変化しないものをいう。触媒がもつ作用(触媒作用、Catalysis)自体を指す場合もある。

1823年デーべライナー白金のかけらに水素を吹き付けると点火することに気がついた。白金は消耗せず、その存在によって水素と空気中の酸素とを反応させることを明確にした。

後に反応によって消費されても、反応の完了と同時に再生し、変化していないように見えるものも触媒とされた。

現在では、反応の種類に応じてたくさんの種類の触媒が開発されている。特に化学工業や有機化学では欠くことができない。また、生物にとっては酵素が重要な触媒としてはたらいている。

目次 [非表示]
1 機構
2 種類
2.1 均一触媒
2.2 不均一触媒
2.3 生体触媒
3 有名な触媒反応
4 関連項目



[編集]
機構
触媒は反応物と反応中間体を形成することで、反応に必要とされる活性化エネルギーを低下させる。これにより、反応は触媒が存在しない場合よりも高速に、または効率よく進行する。言い換えれば、触媒はより反応し易い経路を形成するものであるともいえる。反対に、反応を遅くさせる物質のことを負触媒(逆触媒)という。

有機合成では、反応を早くするだけではなく、複数の反応が起こりうる状態において、目的とする物質を選択的に得るために触媒を用いる。特に光学活性体の合成を行う場合は、不斉源となる触媒を使うことが多い。

[編集]
種類
触媒は目的の反応によって多くの種類が開発されている。状態での分類としては、溶液に溶かして用いる均一触媒(homogeneous catalyst)と、固体で用いる不均一触媒(heterogeneous -)に分類される。例えば、洗剤に配合されている酵素は前者、二酸化マンガンが過酸化水素水を酸素と水へ分解するのは後者である。均一触媒は比較的有機合成で多く用いられ、不均一触媒は化学工業で用いられることが多い。

化学・工業で用いられる触媒はほとんどが人工的に作られた物質であるが、生体内で進行する化学反応を触媒する物質も多く存在し、まとめて生体触媒と呼ぶ。生体触媒で最も重要なものはタンパク質からできている酵素であるが、生命の起源においてはRNAの触媒(リボザイム)が極めて重要な役割を果たしていたといわれている。また、抗体を触媒として利用した抗体触媒の研究も、1990年代には盛んに行われた。

[編集]
均一触媒
均一触媒としては、適当な酸や塩基を触媒とするものや、金属錯体を利用するもの(錯体触媒)がある。金属錯体は配位子を自由にデザインすることで反応性の制御が可能であるため、有機化学の分野でさかんに研究が行われている。

有機反応では、系中に少し酸(塩基)加えるだけで反応性が格段に上昇することがある、これを酸(塩基)触媒という。酸は塩酸、硫酸などのH+を放出するプロトン酸を用いる場合もあるが、不斉反応などでは金属錯体などのルイス酸を使うことも多い。2001年のノーベル化学賞が金属錯体を用いた不斉合成に授与されたように、その重要性はきわめて高く評価されている。

[編集]
不均一触媒
化学工業など、基礎的な化学物質を大量に生産する施設では、生成物の回収や、触媒の性能の維持が容易であるという理由から、不均一触媒が多く用いられている。不均一触媒は白金やパラジウム、酸化鉄のような単純な物質から、ゼオライトのような複雑な構造の無機化合物、あるいは金属錯体も使用される。

多くの場合、不均一触媒は表面で反応が進行する。したがって、触媒の効率をよくするためには、表面積を大きくすることが肝心となる。このため、高価な金属(白金、パラジウムなど)を触媒として用いる場合は、小さな微粒子にして、活性炭やシリカゲルなど(担体という)の表面に塗って使用する。この方法はそのままでは固体として使用するのが難しい金属錯体触媒などでも利用される。

また、自動車には排気ガスに含まれるNOxの浄化用に白金が不均一触媒として使用されている。

[編集]
生体触媒
生体中で触媒としてはたらくタンパク質のことを酵素という。酵素を使った反応は水中で行えるため、有機溶媒の使用を減らすことができ、また錯体触媒に含まれるような重金属を使用しないことから、環境負荷の低い触媒として期待されている。実際にブタの肝臓などから得られる酵素は工業的にも触媒として利用されている。

[編集]
有名な触媒反応
新しい触媒が開発されると、社会的にも非常に大きな影響を与えることがある。

ハーバー・ボッシュ法 - 史上初めて人工的に窒素をアンモニアへと変換した反応。鉄を触媒とする。1918年ノーベル化学賞。
チーグラー・ナッタ触媒 - ポリエチレンなど、優れた特性を持つ高分子の生産を可能とした。チタン錯体を触媒とする。1963年ノーベル化学賞。
メタセシス反応 - 有機合成で極めて多用される、2つのオレフィンをつなげるための反応。ルテニウム錯体が触媒。2005年ノーベル化学賞。
パラジウムカップリング反応 - 炭素炭素結合を作るうえで欠かせない反応。多くの日本人化学者が関与した。パラジウム錯体が触媒。
不斉反応 - 対掌体の一方のみを選択的に得る。金属錯体を中心に、数々の触媒が開発されている。2001年ノーベル化学賞。
燃料電池 - 水素やメタノールを燃料として発電する装置。2005年現在では、電極に白金やルテニウムを触媒として使用しないと高い電圧を得ることができない。
原子核
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
原子核(げんしかく)は、単に核ともいい、原子を電子と共に構成している。原子の中心に位置し核子の塊であり、正電荷を帯びている。核子は、通常の水素原子(軽水素)では陽子1個のみ、その他の原子では陽子と中性子から成る。

原子と比べて原子核は非常に小さく、水素原子以外では、その狭い空間に正電荷をもった陽子が複数存在するため、互いに大きな斥力(電磁気力)を受ける。この斥力に打ち勝って原子核を安定に存在させているのは、中性子の作用である。陽子、中性子の核子間には中間子を媒介した核力が引力として働き、これが電磁気的反発力に打ち勝って原子核を安定化させている。

原子核の質量を半実験的に説明する、ヴァイツゼッカー=ベーテ(Weizsaecker-Bethe)の半実験質量公式(原子核質量公式、他により改良された公式が存在する)がある。

原子核の安定性は、陽子、中性子の数と深く関わっており、特に原子核を安定にさせる数(魔法数)が存在する(液滴モデル、集団運動モデル、など)。ただし、最近の不安定核の研究によって極端に中性子過剰な核などではこれまで知られてきた魔法数の系列が消失することがわかってきた。

全元素中で最も安定な原子核は、鉄56(陽子26個、中性子30個)の原子核である。

電子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
電子(でんし)は、大きく、次の意味で使われる語である。

素粒子の一つ。(後述)
英語の "Electronic" の和訳語。電子工学、電子メール、電子マネーなどの形で使われる。後述の電子(自由電子)の移動量を電気的に制御する電気回路(電子回路)、あるいは電子機器の略か。
物理的な鍵穴ではない、主として磁力線などを利用した錠(ロック)の機構に「電子ロック」などと名づけられたものがある。

--------------------------------------------------------------------------------

核外電子の軌道の例 1sは最もエネルギー準位が低くすべての中性原子が備える。右下のΠと書かれた軌道はベンゼンなどの分子に見られる。電子(でんし, Electron)は宇宙を構成する素粒子の一つ。

電子の電荷の大きさは電気素量に等しく符号はマイナス、スピンは1/2、バリオン数は0で、質量は9.1093897×10-31[kg]である。他に弱アイソスピン、弱超電荷という性質を持つ。電子1つの電荷は約1.602×10-19[C]である。

原子は、原子核とこの電子(核外電子)によって構成される。古典論的に言えば電子は原子核の周りを惑星のように回っている。量子力学的には、電子はとびとびのエネルギー状態を取りながら通常、最もエネルギー準位の低いところから順に原子軌道を占有していく。核外電子のエネルギー準位と化学的な意味については記事 電子配置に詳しい。

ベータ崩壊の際に原子核から出てくる粒子線に含まれる粒子のうちの一つが電子である。中性子が発見される以前は原子核中に電子が存在するという「核内電子説」が存在したが、ベータ崩壊で原子核から飛び出してくる電子は原子核中に存在していたわけではなく、弱い相互作用の結果発生したものが放出される。

電気伝導体内を流れる電流の担い手は、特定の原子の原子核にとらえられていない自由電子である(電荷を運ぶという意味では、ホールやイオンも担い手になる場合がある)。ただし自由電子の移動する方向と電流の流れる方向は逆である。これは電気発見当時の科学者たちが電気(電流という意味としての)は+極から−極に流れると勘違いしてしまったことに端を発する。結局陰極線の発見で自由電子の移動する方向は−極から+極であることが確かめられたのだが、電流は+極から−極に流れるということはすでに慣例となってしまっていたため、やむなく電流と自由電子の流れは逆と定義したわけである。

[編集]
電子の発見
電子の発見は陰極線の発見に端を発する。当時の科学者たちは、電気を通す導体と、電気を通さない絶縁体があり、どんな物体の中でも電圧を上げれば電流を流すことができることを知っていた。そこでほぼ真空に近い陰極線管(クルックス管)に電圧をかけてみると直線状の影が現れた。ドイツの物理学者ゴールドスタインはこの直線が陰極から発せられていたことから陰極線と名付けることにした。この陰極線の正体について学者らの意見は分かれた。欧州大陸の学者は陰極線の正体は海の波のように直線的に動いているので波動であるとし、イギリスの学者は重力の影響を受けないほど高速で移動している粒子であるとした。この大陸側とイギリス側の論争に決着をつけたのはイギリスの物理学者クルックスであった。クルックスは、今日、自身の名前がつけられている陰極線管、いわゆるクルックス管を用いて、以下のような実験を提案した。 陰極線管に磁石を近づけてみると、

負に荷電した粒子であれば磁界によって偏向するだろう
波動であれば磁界によって偏向することはない
また、もし陰極線の正体が荷電した粒子であれば、電界によってより容易に偏向するだろうことが予測され、イギリスの物理学者トムソンは磁気と電気をもちいて陰極線の正体が負に荷電した粒子、すなわち電子であるということをしめした。この電子の発見は原子モデルに大きな変化をもたらした。
脂肪酸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
脂肪酸 (しぼうさん) とは、長鎖炭化水素の1価のカルボン酸である。グリセリンをエステル化して油脂を構成する。脂質の構成成分として利用されるほか、ヒトを含む多くの生体内ではエネルギー源として好気的に代謝される(β酸化)。

CnHmCOOH

広義には油脂や蝋、脂質などの構成成分である有機酸をさすが、狭義には単に鎖状のモノカルボン酸を示す場合が多い。炭素数や二重結合数によって様々な呼称があり、鎖状のみならず分枝鎖を含む脂肪酸も見つかっている。また原核生物からは環状構造を持つ脂肪酸も見つかってきている。

目次 [非表示]
1 脂肪酸の分類と呼称
1.1 炭素数による名称
1.2 不飽和度による名称
2 脂肪酸生合成系
3 高度不飽和脂肪酸の生理活性
4 関連項目



[編集]
脂肪酸の分類と呼称
脂肪酸は主に炭素数と二重結合あるいは三重結合を有するか(不飽和度)によって分類がなされる。不飽和度による分類はさまざまであるが、基本的には以下の分類に従う。

飽和脂肪酸(ほうわ-):炭素鎖に二重結合あるいは三重結合を有しない(飽和である)
不飽和脂肪酸(ふほうわ-):炭素鎖に二重結合、三重結合を有する。 記事 不飽和脂肪酸に詳しい。
また不飽和脂肪酸は二重結合の数が1つであるか、複数であるかによって以下の分類がなされる。

モノエン脂肪酸:二重結合の数が1つである。
ポリエン脂肪酸:二重結合の数が複数である。
高度不飽和脂肪酸:二重結合数が4つ以上存在する。
また、二重結合の有無および炭素数の差異によって名称が異なる。詳細は以下に述べる。

脂肪酸は生合成を受ける際に炭素数が2個ずつ増加していくため、基本的には炭素数が偶数個の脂肪酸が大半を占めるが、α酸化を受けることによって炭素数が奇数個の脂肪酸が合成されることもある。 不飽和度以外の分類方法は、以下にまとめる。なお炭素数による分類は別項を設ける。

分枝脂肪酸:分子鎖を有する脂肪酸
環状脂肪酸:環状構造を有する
ヒドロキシル脂肪酸:ヒドロキシル基を含む
etc.

[編集]
炭素数による名称
脂肪酸は主に炭素鎖の有する炭素数によって名称が異なっている。またIUPAC名(系統名)と慣用名を同時に有するため、名称を扱う際にいささか困難な状況であるかもしれない。以下の名称は全て直鎖の脂肪酸である。分枝脂肪酸は割愛する。

炭素数4:IUPAC名 n-ブタン酸   慣用名 ブチル酸(酪酸)
同5:IUPAC名 n-ペンタン酸    慣用名 バレリアン酸(吉草酸)
同6:IUPAC名 n-ヘキサン酸    慣用名 カプロン酸
同7:IUPAC名 n-ヘプタン酸    慣用名 エナント酸
同8:IUPAC名 n-オクタン酸    慣用名 カプリル酸
同9:IUPAC名 n-ノナン酸     慣用名 ペラルゴン酸
同10:IUPAC名 n-デカン酸     慣用名 カプリン酸
同12:IUPAC名 n-ドデカン酸    慣用名 ラウリン酸
同14:IUPAC名 n-テトラデカン酸  慣用名 ミリスチン酸
同15:IUPAC名 n-ペンタデカン酸  慣用名 ペンタデシル酸
同16:IUPAC名 n-ヘキサデカン酸  慣用名 パルミチン酸
同17:IUPAC名 n-ヘプタデカン酸  慣用名 マルガリン酸
同18:IUPAC名 n-オクタデカン酸  慣用名 ステアリン酸
同20:IUPAC名 n-イコサン酸    慣用名 アラキジン酸
同22:IUPAC名 n-ドコサン酸    慣用名 ベヘン酸
同24:IUPAC名 n-テトラコサン酸  慣用名 リグノセリン酸
同26:IUPAC名 n-ヘキサコサン酸  慣用名 セロチン酸
同28:IUPAC名 n-オクタコサン酸  慣用名 モンタン酸
同30:IUPAC名 n-トリアコンタン酸 慣用名 メリシン酸
一般に炭素数が短くなると融点が下がる。炭素数5のn-ペンタン酸などでは融点は-34.5℃である。一方、炭素数が増加すると融点は上昇する。炭素数30のn-トリアコンタン酸の融点は93.6℃である。

[編集]
不飽和度による名称
不飽和度による名称は以上にあげた、ポリエン脂肪酸および高度不飽和脂肪酸が主なものであるが、上記の炭素数による名称と絡めて特定の名称が与えられることが多い。例えば、高度不飽和脂肪酸として有名なEPA(エイコサペンタエン酸、炭素数20)の系統名は

5,8,11,14,17-エイコサペンタエン酸
である。数字は、カルボキシル基の炭素を1とした場合の炭素の番号を意味しており、5であればカルボキシル基から数えて5番目の炭素となる。数字はその炭素が二重結合を有していることを示しており、炭素数20のうち、5番目、8番目、11番目、14番目、17番目の炭素が二重結合を有することを示している。そしてペンタエンとは二重結合を5個有することを意味する。

このように、二重結合の箇所および二重結合数を有するキーワードを上記の炭素数による名称の中に組み込むことによって、それぞれの名称が与えられる。

しかしながら、中にはポリエン脂肪酸の中には慣用名が用いられているものがある。主なものには

オレイン酸:9-オクタデケン酸
リノール酸:9,12-オクタデジエン酸
リノレン酸:9,12,15-オクタデトリエン酸
等がある。その系統名的名称を付記しておく。

あるいは、単純に炭素数および不飽和数を筆記するだけの方法もある。上記のエイコサペンタエン酸の場合は、炭素数20および二重結合数が5であるために

EPA(20:5)
と筆記する。

[編集]
脂肪酸生合成系
脂肪酸生合成はアセチルCoA(炭素数2)を出発物質として、ここにマロニルCoA(炭素数3)が脱炭酸的に結合していく経路である。すなわち、炭素数2個ずつ反応サイクルごとに増加し、任意の炭素鎖を持った脂肪酸が作成されることとなる。

また、脂肪酸生合成反応が起きるには補酵素Aは用いられず、アシルキャリアータンパク質(ACP)にアセチル基が結合したアセチルACPおよびマロニルACPが実際の反応をになうこととなる。以下に反応系を筆記しておく。

アセチルCoA(C2) + CO2 + ATP → マロニルCoA(C3) + ADP + Pi
アセチルCoA + ACP → アセチルACP + SH-CoA
マロニルCoA + ACP → マロニルACP + SH-CoA
アセチルACP + マロニルACP → アセトアセチルACP(C4) + CO2 + ACP
アセトアセチルACP + NADPH → βヒドロキシブチリルACP(C4) + NADP+
βヒドロキシブチリルACP → クロトニルACP(C4) + H2O
クロトニルACP + NADPH → ブチリルACP(C4) + NADP+
ブチリルACP + マロニルACP → カプリルACP(C6) + ACP + CO2
8.の反応は4.の反応と同じである。このように炭素数2個ずつの脂肪酸炭素鎖の伸長が行なわれる。なお、上記の反応を触媒する酵素は以下の通りである。

アセチルCoAカルボキシラーゼ
アセチルトランスフェラーゼ
マロニルトランスフェラーゼ
3-ケトアシルシンターゼ
3-ケトアシルレダクターゼ
3-ヒドロキシアシルデヒドラターゼ
エノイルレダクターゼ
3-ケトアシルシンターゼ
[編集]
高度不飽和脂肪酸の生理活性
[編集]
関連項目
β酸化
脂質
生体膜
必須脂肪酸
炭水化物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: ナビゲーション, 検索
炭水化物(たんすいかぶつ, carbohydrates)とは、単糖を構成成分とする有機化合物の総称であり、その多くは分子式がCmH2nOnで表される。Cm(H2O)nと表すと炭素に水が結合した物質のように見えるため炭水化物と呼ばれる(かつては含水炭素とも呼ばれた)。また、糖質とも呼ばれる。

定義としては、炭水化物は糖およびその誘導体の総称であり、[分子式]]がCmH2nOnと表されない炭水化物もある。(例:C5H10O4 デオキシリボース) ただし、分子式がCmH2nOnではあっても、ホルムアルデヒド(CH2O)は炭水化物とは呼ばれない。今日では総称として糖質ないしは糖とよばれる場面の方が多くなっている。

栄養学的あるいはエネルギー代謝以外の糖質の事項については(例えば、化学的、分子生物学的性質)記事 糖に詳しい。

炭水化物は主に植物の光合成でつくられる。

目次 [非表示]
1 炭水化物に分類されるもの
1.1 栄養学的分類
1.2 化学的分類
2 炭水化物の生理作用
3 関連項目



[編集]
炭水化物に分類されるもの
[編集]
栄養学的分類
健康増進法に基づく栄養表示基準では、国内で消費者向けに販売される食品に、邦文にて栄養成分の表示を付するに際し、「炭水化物」の含有量の表示を義務付けている。(特例として、炭水化物に代えて「糖質」及び「食物繊維」の含有量の表示も認められる。) また、これとは別に、状況に応じ(例えば、「糖類ゼロ(無糖・ノンシュガー・シュガーレスの表示も同じ意味)」「低糖・従来比糖類○○%カット」などの表記をする場合)「糖類」の含有量が表記される場合がある。 これらの便宜的分類を示すとおよそ下記の通り。

炭水化物
食物繊維
糖質(食物繊維ではない炭水化物)
糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないもの。)
そのほか(デンプンなど)
[編集]
化学的分類
より厳密には、炭水化物とは


アルデヒド基またはケトン基を持つ多価アルコール
単糖
少糖
単糖が2個〜20個程度結合したもの。オリゴ糖ともいう。単糖の結合した数により、特に二糖、三糖などという場合もある。
多糖
単糖がオリゴ糖以上に結合したもの。
糖の誘導体
を包括する一般名称である。

[編集]
炭水化物の生理作用
炭水化物は生物にとって大きく分けて3種類の働きを持つ。

エネルギー源
形態構築の材料
分子的な「標識」
単糖であるグルコースは細胞の主なエネルギー源である。また、とりわけ人間にとっては、思考の際の脳のエネルギー源としても非常に重要である。グルコースは植物ではデンプン、動物ではグリコーゲンとして、高分子として体内に蓄えられる。

植物の体はセルロースという多糖によって構成されている。セルロースはデンプンと同じグルコースの多量体であるが、結合様式が異なるため、化学的に極めて強靭な構造を持つ。セルロースは細胞壁の主成分として活用されている。

また、細胞の表層には、糖鎖と呼ばれる糖の多量体が結合している。これはタンパク質に対する受容体ほど強くは無いものの、生体内である種の「標識」としてはたらいている。
物質代謝
物質代謝とは、細胞内における物質の変換を意味する。別名、物質交代など。上記にもあるようにエネルギー代謝との関連により両者を分けて考えるのは困難だが、物質の変換に注目してみた場合の『代謝』が物質代謝である。物質代謝は異化および同化に分けられる。

異化と同化反応は関連している。例えば異化反応である解糖系の逆行は糖新生経路(糖の合成)であり、酸化的クエン酸回路(異化)の逆行である還元的クエン酸回路では炭酸固定(同化)が行なわれる。また、カルビン - ベンソン回路(同化)は解糖系の一種であるペントースリン酸経路(異化)が還元的に働いたものである。

しかしながら、この両者は反応の方向性とATPあるいは還元型ピリジンヌクレオチド(NADH or NADPH)が生成されるか否かに注目すると容易に区別がつく(ATPおよび還元型ピリジンヌクレオチドの生成を行なうのが異化、異化により生成したエネルギーを用いて生体高分子の合成を行なうのが同化)。

[編集]
異化
異化とは外部の有機物あるいは無機物を分解し、エネルギーを得てATPを合成する代謝である。現生する生物は地球上に存在するほとんどの有機化合物を代謝できると言われているが、異化代謝系が各々に存在しているわけではなく、代表的なATP生成機構に最終的には集約されていく。それらの機構とは発酵、呼吸、光合成の3つである。光合成はカルビン - ベンソン回路が含まれる場合は同化反応となりうるが、光化学反応においては、NADPHおよびATPが生産されるために異化反応に分類される。またATP合成を主たる目的とした循環的光リン酸化はより異化反応的側面が強い。

[編集]
発酵
発酵は基質レベルのリン酸化によるATP生成を行なうが、電子伝達系を通らずエネルギー効率としてはきわめて低い。しかしながら機構の単純さや酸素が要らないなどの理由から多くの微生物にてよく見られる。なお無酸素運動における筋肉でも解糖系が乳酸発酵へと転じている(筋肉痛)。

電子供与体および電子受容体はともに有機物であり、電子供与体となる還元物質には通常、糖が使用される。しかしながら微生物はある種の有機酸(酢酸、乳酸など)、アミノ酸、ヌクレオチドなどを基質に発酵する能力を有する。

基質レベルのリン酸化によるATP生成の式は以下の通りである。

グルコース + ADP + Pi + NAD+ → ピルビン酸 + ATP + NADH
しかしながら、生じた還元型ピリジンヌクレオチド(NADH)は生物にとっては有害なピルビン酸の異化反応に使用される(以下乳酸発酵の例)。

ピルビン酸 + NADH → 乳酸 + NAD+
微生物の行なう発酵の電子受容体(産物)としては、乳酸、エタノールをはじめブタノール、酪酸、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、アセトンなどがある。

詳しくは発酵を参照。

[編集]
呼吸
呼吸は基質レベルのリン酸化過程(解糖系、クエン酸回路)および電子伝達系を通り、ATPの生成を行う。上記の代謝系は電子供与体として有機物を用いる多くの従属栄養生物に見られるATP合成系であるが、最終電子受容体に使用できるのはほとんどが数種の無機物である。また、無機物を電子供与体とする化学合成独立栄養生物の行なう呼吸も含まれる。そのような無機物には水素、一酸化炭素、アンモニア、亜硝酸塩、一価鉄、硫化水素などがある。

最終電子受容体を酸素として用いる呼吸を『好気呼吸』それ以外の無機物を用いるものを『嫌気呼吸』という。化学合成独立栄養の場合は、多くは酸素を最終電子受容体として用いるが、嫌気呼吸の電子伝達系を併せ持つものも存在する。なお、嫌気呼吸の電子受容体には硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、二価鉄等の無機物や、トリメチルアミンオキサイド(TMAO)やジメチルスルフォキシド(DMSO)といった有機物を用いるものもある。

基質レベルのリン酸化は解糖系およびクエン酸回路で発生する。またそのとき生じた還元型ピリジンヌクレオチドは電子伝達系を通って、ATP生成に使用される。基質レベルのリン酸化ではわずかグルコース1分子辺り4分子のATPしか生成し得ないが、電子伝達系においては平均して34分子のATPが生産可能である(ただし計算によっては34分子以上生産されているかもしれない)。

最終産物は酸素を用いた場合は水、硝酸塩は窒素など(あるいは一酸化窒素、一酸化二窒素など)、硫酸塩の場合は硫化水素などである。

詳しくは呼吸、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系、嫌気呼吸を参照。

[編集]
光化学反応
光化学反応は光エネルギーによる電子の励起およびそれに伴う電子伝達によってATP生成が行われる。光合成反応は植物および一部の細菌(光合成細菌;シアノバクテリア、紅色硫黄細菌など)のみが有している。電子供与体には酸素発生型光合成の場合H2Oが使用される。また酸素非発生型光合成の場合は、硫化水素、水素をはじめ幾つかの有機化合物(プロパノールなど)を電子供与体として利用する。

酸素発生型光合成の場合、水2分子あたり4分子のATPおよび2分子のNADPHが生産される。うち3分子のATPおよび2分子のNADPHを用いて炭酸同化を行う。また電子がピリジンヌクレオチド(あるいはフェレドキシン)に伝達された後に再び電子伝達系に戻る光化学反応を循環的光リン酸化というが、こちらは電子が光合成電子伝達系を回転するために、光励起を受ける限りATP生成が行なわれる。明条件かつ有機物の少ない環境ではこのような異化反応が見られる。循環的光リン酸化の収支は以下の通りである。

光化学系I → 光励起P700(光化学反応中心)
光励起P700(光化学反応中心) → 初発電子受容体A0
初発電子受容体A0 → フェレドキシン
フェレドキシン → プラストキノン
プラストキノン → シトクロムb6/f複合体
シトクロムb6/f複合体 → 光化学系I(上に戻る)
なお、光合成反応は好気的な反応と思われがちだが、必ずしもそうではない。酸素を発生するために好気条件のように見えるが、酸素非発生型光合成を行なう光合成細菌のほとんどが極度の嫌気性である(シアノバクテリアは除く)。酸素発生型光合成の起源は光合成細菌の光化学系を起源とするので、光化学反応は『明条件かつ嫌気的な』代謝系である。

詳しくは光合成、光化学反応を参照。

[編集]
同化
同化とは、異化反応によって得られたエネルギー(ATPや還元型ピリジンヌクレオチド)を用いて、外部の無機物を取り込み、有機物を構築し最終的には生体高分子さらには増殖を行なう過程である。生合成と呼称されることもある。同化反応は異化のように代謝系に注目するよりも、低分子無機物の取り込み、無機物から低分子有機物の構築、ならびに生体高分子の構築という順に、生体分子の構築過程に注目すると理解しやすい。したがって生体分子を主として構築する核酸、タンパク質、多糖、脂質の形成過程に注目する。

なお、無機態の炭素、窒素、硫黄の取り込みを可能にするのは独立栄養生物のみであり、従属栄養生物は生体高分子(有機物)の異化から生合成系へ流れていく。したがって、この点でも異化と同化は関連していることがわかる。

[編集]
無機態炭素、窒素、硫黄の取り込み
無機態の炭素は主に二酸化炭素として固定される。炭酸固定経路は光合成のカルビン - ベンソン回路や還元的クエン酸回路、メタン生成経路などによる。カルビン回路は光化学反応によって生じたATPおよびNADPH、還元的クエン酸回路はピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素による、通常のクエン酸回路の逆行、メタン生成経路はATP合成と炭酸固定が同時に行なわれる。炭酸固定によって生じた生産物は通常は糖としてあるいは異化の中間代謝物として、高次の生合成に組み込まれる。詳しくは当該記事へ。

水圏以外にも豊富に存在する窒素源としては大気中の窒素ガスが挙げられる。窒素ガスは窒素固定という代謝系のみでアンモニアまで還元される。窒素固定は根粒菌などでは呼吸による、シアノバクテリアでは光化学系Iの循環的光リン酸化によるATP生成にて窒素固定が行なわれる。窒素固定反応は以下の通りである。

N2 + 6Fdred + 12ATP + 6H+ → 2NH3 + 12ADP + 12Pi
2H+ + 2Fdred + 4ATP → H2 + 4ADP + 4Pi
硝酸塩は有機物窒素と比べて酸化的であり、同化的硝酸還元と言う過程にてアンモニアまで還元される。

NO3- + NAD(P)H + H+ → NO2- + NAD(P)+ + H20
NO2- + 6Fdred → NH3 + 2H20
最終産物のアンモニアは下記の系によりアミノ酸に取り込まれる。 また、アンモニアに含まれる窒素の酸化レベルは有機物窒素と同一であり、還元型ピリジンヌクレオチドなどは必要としない。アンモニア同化反応は以下の3つがある。

ケトグルタル酸(クエン酸回路中間体) + NH3 → グルタミン酸
グルタミン酸 + NH3 → グルタミン
アスパラギン酸 + NH3 → アスパラギン
硫黄は同化的硫酸還元によってタンパク質にチオールあるいはスルホ基として取り込まれる。硫酸塩はタンパク質中の硫黄と比べて還元的であり、アデノシンと結合することにより活性型の硫黄(ホスホアデノシンホスホ硫酸;PAPS)の状態でタンパク質と硫黄が結合する。

SO4- + ATP → APS + PPi
APS + ATP → PAPS + ADP
PAPS + Protein-SH基 → Protein-S-SO3-(このProteinの末端は含硫黄アミノ酸であるシステイン)
Protein-S-SO3- + 6Fdred → S2-(有機物として利用され得る硫黄) + S-S結合を有するタンパク質
Protein S-S bond + NADPH → Protein-SH + NADP+
S2-はその後、システイン、ホモシステインを経てメチオニンに取り込まれる。ただし、硫黄代謝は更に多様であると考えられており、異化型硫酸還元や硫黄酸化などでは、更に複雑な中間体が生じている可能性が示唆されている。

[編集]
ヌクレオチド、アミノ酸、炭水化物および脂肪酸の生合成
上記の反応により細胞内取り込まれた炭素、窒素、硫黄は豊富に存在している水と化合し、生体高分子の単量体であるヌクレオチド、アミノ酸、糖などの有機物を生合成する。これらの生体高分子のモノマーには前駆体として中央代謝系(解糖系、クエン酸回路)の中間代謝物が用いられることが多い。

核酸(DNA、RNA)のモノマーであるヌクレオチドはプリン、ピリミジン塩基に五炭糖であるリボースあるいはデオキシリボースの5'位にリン酸が結合している構造をとっている。プリン(アデニン、グアニン)ピリミジン(ウラシル、シトシン)ヌクレオチドはそれぞれ異なる経路にて合成される。まずピリミジンヌクレオチドの合成系は以下のとおりである。

カルバモイルリン酸 + アスパラギン酸 → オロチン酸
リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸
オロチン酸 + ホスホリボシル1ピロリン酸 → オロチジン5'リン酸(OMP)
オロチジン5'リン酸 → ウリジン5'リン酸(UMP) + CO2
ウリジン5'リン酸(UMP) + ATP → ウリジン三リン酸(UTP)
ウリジン三リン酸 + グルタミン → シチジン三リン酸(CTP)
リボース5リン酸はペントースリン酸経路より生じている。またアスパラギン酸は後述するアミノ酸合成系より生じている。カルバモイルリン酸はアミノ酸とリン酸を基質としてカルバモイルリン酸合成酵素により合成される。プリン合成系については以下のとおりである。

リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸
ホスホリボシル1ピロリン酸 + アスパラギンあるいはグルタミン酸由来のアミノ基 → ホスホリボシルアミン
ホスホリボシルアミン + グリシン + ATP → グリシナマイドヌクレオチド
グリシナマイドヌクレオチド + グルタミン由来アミノ基 + ATP + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → 5アミノイミダゾールリボヌクレオチド
5アミノイミダゾールリボヌクレオチド + ATP + CO2 + アスパラギン酸由来のアミノ基 → 5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド
5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → イノシン5'リン酸(IMP)
イノシン5'リン酸 + アスパラギン酸 + ATP → アデノシン三リン酸(ATP)
イノシン5'リン酸 + グルタミン + ATP → グアノシン三リン酸(GTP)
上記の過程で合成されたリボヌクレオチド(RNA)はリボース部位が還元を受けることいによってデオキシリボースとなり、デオキシリボヌクレオチド(DNA)が合成される。また、DNAにおいてアデニンと相補的塩基対を構成するチミンはピリミジン塩基でありながらはウラシル、シトシンとは異なる経路にて合成される。チミン合成系には葉酸およびコバミド(ビタミンB12の補酵素形)を要求することがわかっている。また、上記の新生経路(de novo経路)のみならず、使用済みの核酸を再利用するサルベージ経路も存在する。

タンパク質を構成する20種のアミノ酸については各アミノ酸の炭素骨格から生合成経路が決定される。アミノ酸は炭素骨格によって以下の『族』に分類することが可能である。

グルタミン酸族:グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、プロリン
アスパラギン酸族:アスパラギン酸、アスパラギン、リシン、メチオニン、スレオニン、イソロイシン
芳香族:トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン
セリン族:セリン、グリシン、システイン
ピルビン酸族:アラニン、バリン、ロイシン
なお、それぞれの族の前駆体および由来する代謝系は以下のとおりである。

グルタミン酸族:ケトグルタル酸(クエン酸回路)
アスパラギン酸族:オキサロ酢酸(クエン酸回路)
芳香族:ホスホエノールピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路) + エリトロース4リン酸(ペントースリン酸経路)
セリン族:3ホスホグリセリン酸(解糖系:EM経路、ED経路)
ピルビン酸族:ピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路)
なお、上記の例は中央代謝系を基準にしたものであり、中央代謝系以外に回路を所持している、例えば植物などでは芳香族はシキミ酸経路、セリン族はカルビン - ベンソン回路由来のグリセリン酸リン酸より生合成を行う。なお、ヒスチジンのみが上記の族に属さずペントースリン酸経路由来のリボース5リン酸より合成される。

すべての前駆体は中央代謝系に由来するものであり、理論上、糖さえ摂取すればすべてのアミノ酸を合成できるはずだが、マウス、ヒトにおいては必須アミノ酸といわれる一群のアミノ酸を経口摂取する必要がある。それらは芳香族、アスパラギン酸族およびピルビン酸族のアミノ酸である。

糖については、解糖系の逆行である糖新生系にて合成される。また、ペントースリン酸経路においては多種多様な糖が合成される。また還元的ペントースリン酸経路と呼称されるカルビン - ベンソン回路においても同様である。

脂肪酸はアセチルCoAを基質として脂肪酸合成経路にて合成される。アセチルCoAは解糖系に由来するものであるが必要な還元力にはNADPHが使用される。NADPHはペントースリン酸経路よ