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物質代謝 物質代謝とは、細胞内における物質の変換を意味する。別名、物質交代など。上記にもあるようにエネルギー代謝との関連により両者を分けて考えるのは困難だが、物質の変換に注目してみた場合の『代謝』が物質代謝である。物質代謝は異化および同化に分けられる。 異化と同化反応は関連している。例えば異化反応である解糖系の逆行は糖新生経路(糖の合成)であり、酸化的クエン酸回路(異化)の逆行である還元的クエン酸回路では炭酸固定(同化)が行なわれる。また、カルビン - ベンソン回路(同化)は解糖系の一種であるペントースリン酸経路(異化)が還元的に働いたものである。 しかしながら、この両者は反応の方向性とATPあるいは還元型ピリジンヌクレオチド(NADH or NADPH)が生成されるか否かに注目すると容易に区別がつく(ATPおよび還元型ピリジンヌクレオチドの生成を行なうのが異化、異化により生成したエネルギーを用いて生体高分子の合成を行なうのが同化)。 [編集] 異化 異化とは外部の有機物あるいは無機物を分解し、エネルギーを得てATPを合成する代謝である。現生する生物は地球上に存在するほとんどの有機化合物を代謝できると言われているが、異化代謝系が各々に存在しているわけではなく、代表的なATP生成機構に最終的には集約されていく。それらの機構とは発酵、呼吸、光合成の3つである。光合成はカルビン - ベンソン回路が含まれる場合は同化反応となりうるが、光化学反応においては、NADPHおよびATPが生産されるために異化反応に分類される。またATP合成を主たる目的とした循環的光リン酸化はより異化反応的側面が強い。 [編集] 発酵 発酵は基質レベルのリン酸化によるATP生成を行なうが、電子伝達系を通らずエネルギー効率としてはきわめて低い。しかしながら機構の単純さや酸素が要らないなどの理由から多くの微生物にてよく見られる。なお無酸素運動における筋肉でも解糖系が乳酸発酵へと転じている(筋肉痛)。 電子供与体および電子受容体はともに有機物であり、電子供与体となる還元物質には通常、糖が使用される。しかしながら微生物はある種の有機酸(酢酸、乳酸など)、アミノ酸、ヌクレオチドなどを基質に発酵する能力を有する。 基質レベルのリン酸化によるATP生成の式は以下の通りである。 グルコース + ADP + Pi + NAD+ → ピルビン酸 + ATP + NADH しかしながら、生じた還元型ピリジンヌクレオチド(NADH)は生物にとっては有害なピルビン酸の異化反応に使用される(以下乳酸発酵の例)。 ピルビン酸 + NADH → 乳酸 + NAD+ 微生物の行なう発酵の電子受容体(産物)としては、乳酸、エタノールをはじめブタノール、酪酸、イソプロパノール、酢酸、プロピオン酸、ギ酸、アセトンなどがある。 詳しくは発酵を参照。 [編集] 呼吸 呼吸は基質レベルのリン酸化過程(解糖系、クエン酸回路)および電子伝達系を通り、ATPの生成を行う。上記の代謝系は電子供与体として有機物を用いる多くの従属栄養生物に見られるATP合成系であるが、最終電子受容体に使用できるのはほとんどが数種の無機物である。また、無機物を電子供与体とする化学合成独立栄養生物の行なう呼吸も含まれる。そのような無機物には水素、一酸化炭素、アンモニア、亜硝酸塩、一価鉄、硫化水素などがある。 最終電子受容体を酸素として用いる呼吸を『好気呼吸』それ以外の無機物を用いるものを『嫌気呼吸』という。化学合成独立栄養の場合は、多くは酸素を最終電子受容体として用いるが、嫌気呼吸の電子伝達系を併せ持つものも存在する。なお、嫌気呼吸の電子受容体には硝酸塩、硫酸塩、亜硝酸塩、二価鉄等の無機物や、トリメチルアミンオキサイド(TMAO)やジメチルスルフォキシド(DMSO)といった有機物を用いるものもある。 基質レベルのリン酸化は解糖系およびクエン酸回路で発生する。またそのとき生じた還元型ピリジンヌクレオチドは電子伝達系を通って、ATP生成に使用される。基質レベルのリン酸化ではわずかグルコース1分子辺り4分子のATPしか生成し得ないが、電子伝達系においては平均して34分子のATPが生産可能である(ただし計算によっては34分子以上生産されているかもしれない)。 最終産物は酸素を用いた場合は水、硝酸塩は窒素など(あるいは一酸化窒素、一酸化二窒素など)、硫酸塩の場合は硫化水素などである。 詳しくは呼吸、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系、嫌気呼吸を参照。 [編集] 光化学反応 光化学反応は光エネルギーによる電子の励起およびそれに伴う電子伝達によってATP生成が行われる。光合成反応は植物および一部の細菌(光合成細菌;シアノバクテリア、紅色硫黄細菌など)のみが有している。電子供与体には酸素発生型光合成の場合H2Oが使用される。また酸素非発生型光合成の場合は、硫化水素、水素をはじめ幾つかの有機化合物(プロパノールなど)を電子供与体として利用する。 酸素発生型光合成の場合、水2分子あたり4分子のATPおよび2分子のNADPHが生産される。うち3分子のATPおよび2分子のNADPHを用いて炭酸同化を行う。また電子がピリジンヌクレオチド(あるいはフェレドキシン)に伝達された後に再び電子伝達系に戻る光化学反応を循環的光リン酸化というが、こちらは電子が光合成電子伝達系を回転するために、光励起を受ける限りATP生成が行なわれる。明条件かつ有機物の少ない環境ではこのような異化反応が見られる。循環的光リン酸化の収支は以下の通りである。 光化学系I → 光励起P700(光化学反応中心) 光励起P700(光化学反応中心) → 初発電子受容体A0 初発電子受容体A0 → フェレドキシン フェレドキシン → プラストキノン プラストキノン → シトクロムb6/f複合体 シトクロムb6/f複合体 → 光化学系I(上に戻る) なお、光合成反応は好気的な反応と思われがちだが、必ずしもそうではない。酸素を発生するために好気条件のように見えるが、酸素非発生型光合成を行なう光合成細菌のほとんどが極度の嫌気性である(シアノバクテリアは除く)。酸素発生型光合成の起源は光合成細菌の光化学系を起源とするので、光化学反応は『明条件かつ嫌気的な』代謝系である。 詳しくは光合成、光化学反応を参照。 [編集] 同化 同化とは、異化反応によって得られたエネルギー(ATPや還元型ピリジンヌクレオチド)を用いて、外部の無機物を取り込み、有機物を構築し最終的には生体高分子さらには増殖を行なう過程である。生合成と呼称されることもある。同化反応は異化のように代謝系に注目するよりも、低分子無機物の取り込み、無機物から低分子有機物の構築、ならびに生体高分子の構築という順に、生体分子の構築過程に注目すると理解しやすい。したがって生体分子を主として構築する核酸、タンパク質、多糖、脂質の形成過程に注目する。 なお、無機態の炭素、窒素、硫黄の取り込みを可能にするのは独立栄養生物のみであり、従属栄養生物は生体高分子(有機物)の異化から生合成系へ流れていく。したがって、この点でも異化と同化は関連していることがわかる。 [編集] 無機態炭素、窒素、硫黄の取り込み 無機態の炭素は主に二酸化炭素として固定される。炭酸固定経路は光合成のカルビン - ベンソン回路や還元的クエン酸回路、メタン生成経路などによる。カルビン回路は光化学反応によって生じたATPおよびNADPH、還元的クエン酸回路はピルビン酸:フェレドキシン酸化還元酵素による、通常のクエン酸回路の逆行、メタン生成経路はATP合成と炭酸固定が同時に行なわれる。炭酸固定によって生じた生産物は通常は糖としてあるいは異化の中間代謝物として、高次の生合成に組み込まれる。詳しくは当該記事へ。 水圏以外にも豊富に存在する窒素源としては大気中の窒素ガスが挙げられる。窒素ガスは窒素固定という代謝系のみでアンモニアまで還元される。窒素固定は根粒菌などでは呼吸による、シアノバクテリアでは光化学系Iの循環的光リン酸化によるATP生成にて窒素固定が行なわれる。窒素固定反応は以下の通りである。 N2 + 6Fdred + 12ATP + 6H+ → 2NH3 + 12ADP + 12Pi 2H+ + 2Fdred + 4ATP → H2 + 4ADP + 4Pi 硝酸塩は有機物窒素と比べて酸化的であり、同化的硝酸還元と言う過程にてアンモニアまで還元される。 NO3- + NAD(P)H + H+ → NO2- + NAD(P)+ + H20 NO2- + 6Fdred → NH3 + 2H20 最終産物のアンモニアは下記の系によりアミノ酸に取り込まれる。 また、アンモニアに含まれる窒素の酸化レベルは有機物窒素と同一であり、還元型ピリジンヌクレオチドなどは必要としない。アンモニア同化反応は以下の3つがある。 ケトグルタル酸(クエン酸回路中間体) + NH3 → グルタミン酸 グルタミン酸 + NH3 → グルタミン アスパラギン酸 + NH3 → アスパラギン 硫黄は同化的硫酸還元によってタンパク質にチオールあるいはスルホ基として取り込まれる。硫酸塩はタンパク質中の硫黄と比べて還元的であり、アデノシンと結合することにより活性型の硫黄(ホスホアデノシンホスホ硫酸;PAPS)の状態でタンパク質と硫黄が結合する。 SO4- + ATP → APS + PPi APS + ATP → PAPS + ADP PAPS + Protein-SH基 → Protein-S-SO3-(このProteinの末端は含硫黄アミノ酸であるシステイン) Protein-S-SO3- + 6Fdred → S2-(有機物として利用され得る硫黄) + S-S結合を有するタンパク質 Protein S-S bond + NADPH → Protein-SH + NADP+ S2-はその後、システイン、ホモシステインを経てメチオニンに取り込まれる。ただし、硫黄代謝は更に多様であると考えられており、異化型硫酸還元や硫黄酸化などでは、更に複雑な中間体が生じている可能性が示唆されている。 [編集] ヌクレオチド、アミノ酸、炭水化物および脂肪酸の生合成 上記の反応により細胞内取り込まれた炭素、窒素、硫黄は豊富に存在している水と化合し、生体高分子の単量体であるヌクレオチド、アミノ酸、糖などの有機物を生合成する。これらの生体高分子のモノマーには前駆体として中央代謝系(解糖系、クエン酸回路)の中間代謝物が用いられることが多い。 核酸(DNA、RNA)のモノマーであるヌクレオチドはプリン、ピリミジン塩基に五炭糖であるリボースあるいはデオキシリボースの5'位にリン酸が結合している構造をとっている。プリン(アデニン、グアニン)ピリミジン(ウラシル、シトシン)ヌクレオチドはそれぞれ異なる経路にて合成される。まずピリミジンヌクレオチドの合成系は以下のとおりである。 カルバモイルリン酸 + アスパラギン酸 → オロチン酸 リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸 オロチン酸 + ホスホリボシル1ピロリン酸 → オロチジン5'リン酸(OMP) オロチジン5'リン酸 → ウリジン5'リン酸(UMP) + CO2 ウリジン5'リン酸(UMP) + ATP → ウリジン三リン酸(UTP) ウリジン三リン酸 + グルタミン → シチジン三リン酸(CTP) リボース5リン酸はペントースリン酸経路より生じている。またアスパラギン酸は後述するアミノ酸合成系より生じている。カルバモイルリン酸はアミノ酸とリン酸を基質としてカルバモイルリン酸合成酵素により合成される。プリン合成系については以下のとおりである。 リボース5リン酸 + ATP → ホスホリボシル1ピロリン酸 ホスホリボシル1ピロリン酸 + アスパラギンあるいはグルタミン酸由来のアミノ基 → ホスホリボシルアミン ホスホリボシルアミン + グリシン + ATP → グリシナマイドヌクレオチド グリシナマイドヌクレオチド + グルタミン由来アミノ基 + ATP + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → 5アミノイミダゾールリボヌクレオチド 5アミノイミダゾールリボヌクレオチド + ATP + CO2 + アスパラギン酸由来のアミノ基 → 5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド 5アミノイミダゾール4サクシノカルボキサミドリボヌクレオチド + ホルミルTHFA由来のアルデヒド基 → イノシン5'リン酸(IMP) イノシン5'リン酸 + アスパラギン酸 + ATP → アデノシン三リン酸(ATP) イノシン5'リン酸 + グルタミン + ATP → グアノシン三リン酸(GTP) 上記の過程で合成されたリボヌクレオチド(RNA)はリボース部位が還元を受けることいによってデオキシリボースとなり、デオキシリボヌクレオチド(DNA)が合成される。また、DNAにおいてアデニンと相補的塩基対を構成するチミンはピリミジン塩基でありながらはウラシル、シトシンとは異なる経路にて合成される。チミン合成系には葉酸およびコバミド(ビタミンB12の補酵素形)を要求することがわかっている。また、上記の新生経路(de novo経路)のみならず、使用済みの核酸を再利用するサルベージ経路も存在する。 タンパク質を構成する20種のアミノ酸については各アミノ酸の炭素骨格から生合成経路が決定される。アミノ酸は炭素骨格によって以下の『族』に分類することが可能である。 グルタミン酸族:グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、プロリン アスパラギン酸族:アスパラギン酸、アスパラギン、リシン、メチオニン、スレオニン、イソロイシン 芳香族:トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン セリン族:セリン、グリシン、システイン ピルビン酸族:アラニン、バリン、ロイシン なお、それぞれの族の前駆体および由来する代謝系は以下のとおりである。 グルタミン酸族:ケトグルタル酸(クエン酸回路) アスパラギン酸族:オキサロ酢酸(クエン酸回路) 芳香族:ホスホエノールピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路) + エリトロース4リン酸(ペントースリン酸経路) セリン族:3ホスホグリセリン酸(解糖系:EM経路、ED経路) ピルビン酸族:ピルビン酸(解糖系:EM経路、ED経路) なお、上記の例は中央代謝系を基準にしたものであり、中央代謝系以外に回路を所持している、例えば植物などでは芳香族はシキミ酸経路、セリン族はカルビン - ベンソン回路由来のグリセリン酸リン酸より生合成を行う。なお、ヒスチジンのみが上記の族に属さずペントースリン酸経路由来のリボース5リン酸より合成される。 すべての前駆体は中央代謝系に由来するものであり、理論上、糖さえ摂取すればすべてのアミノ酸を合成できるはずだが、マウス、ヒトにおいては必須アミノ酸といわれる一群のアミノ酸を経口摂取する必要がある。それらは芳香族、アスパラギン酸族およびピルビン酸族のアミノ酸である。 糖については、解糖系の逆行である糖新生系にて合成される。また、ペントースリン酸経路においては多種多様な糖が合成される。また還元的ペントースリン酸経路と呼称されるカルビン - ベンソン回路においても同様である。 脂肪酸はアセチルCoAを基質として脂肪酸合成経路にて合成される。アセチルCoAは解糖系に由来するものであるが必要な還元力にはNADPHが使用される。NADPHはペントースリン酸経路よ |



