治療と予防
通常は抗生物質を使用しなくても数日で回復する。ただしニューキノロン系、テトラサイクリン、カナマイシンなどの本菌に有効な抗菌薬剤による化学療法が行われることもある。一方、止瀉薬(下痢止め)の使用は菌の排出を遅らせることがあるため用いないことが多い。脱水症や循環器症状には十分な注意を払うことが必要であり、必要に応じて適切な対症療法も行う。

予防には、本菌による食物の汚染を防ぎ、汚染された食物を摂取しないことがもっとも重要である。増殖が早い菌であるため、特に夏期には生の魚介類を常温で放置しないことが重要である。低温に弱い菌であるため、冷蔵保存することが感染防御の上で重要である。また、真水や高温などに弱い菌であるため、生魚を真水でよく洗浄することや、十分に加熱調理することでも感染を予防することが出来る。

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溶血毒
腸炎ビブリオのうち、食中毒の原因として分離されるものの多くは、溶血毒と呼ばれる毒素を産生し、これが本菌の主要な病原因子である。溶血毒は、赤血球の細胞膜に孔をあけて溶血現象を引き起こす毒素の総称であるが、その多くは赤血球以外の細胞の細胞膜にも作用して、細胞傷害を起こす。腸炎ビブリオの溶血毒は、主に腸管や心臓に作用して、腸管毒性により下痢を生じるほか、重症例では心臓毒性によって患者を死に至らしめる場合もある。

腸炎ビブリオの溶血毒には、耐熱性溶血毒(TDH, termostable direct hemolysin)と耐熱性毒素関連溶血毒(TRH, TDH-related hemolysin)の二種類が知られている。このうちTDHの方が古くから知られており、研究が進んできた。TDHを産生する腸炎ビブリオかどうかを判別するためには、我妻培地(あがつまばいち、マンニトールを加えた血液寒天培地)に培養したときに溶血性を示すかどうか(コロニー周辺の赤血球が破壊され、その部分の培地が透明になる)で判定される。この溶血現象は神奈川現象と呼ばれ、病原性の腸炎ビブリオかどうかを判定する試験法の一つである。しかし、1988年には、神奈川現象陰性の腸炎ビブリオによる食中毒が発見され、この原因菌がTDHを産生せず、TRHを産生していることが判明した。また神奈川現象自体の感度があまり高くはないことから、毒素に対する抗体を用いた免疫化学的な手法も、腸炎ビブリオの鑑別のために併用されている。














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