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酵素 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 移動: ナビゲーション, 検索 目次 [非表示] 1 酵素による反応 1.1 酵素反応と外的因子 1.2 酵素反応と基質濃度 2 酵素の生物体内での所在 2.1 可溶型酵素 2.2 細胞外酵素 2.3 生体膜酵素 3 構造 3.1 補因子(共同因子) 4 酵素触媒機構モデル 4.1 鍵と鍵穴説 4.2 基質の結合 4.3 誘導適合 4.4 酵素の内の酸塩基触媒 5 酵素反応の調節機構 5.1 アロステリック効果 6 酵素の実生活への応用 7 酵素の分類法 7.1 酵素の命名法 8 生命の起源と触媒作用 9 酵素の歴史 9.1 19世紀 9.2 20世紀 10 代表的な酵素 11 工業用酵素 12 関連項目
酵素(こうそ)とは生体内の化学反応(代謝)を進行させる生体触媒のこと。タンパク質からなるものが多く、その活性を発現するために低分子の補酵素を必要とするものものある。酵素が化学構造を認識して作用する化学物質を基質と呼ぶ。
[編集] 酵素による反応 一般に化学反応を進行させるには、以下の方法がある。
温度の上昇 圧力変化 酸塩基触媒(pHの変化) 基質の濃度をあげる 触媒を反応系に入れる 反応に適した状態(水相、気相の選択)を作ってやる などなど。
ここで論じる酵素は、
反応の前後に変化することなく、 化学反応の活性化エネルギーを減少させ反応を進行させる 触媒(しょくばい)としての機能を持っている。酵素は金属のような無機触媒よりも優れた性質をいくつか持っている。それは、
常温、常圧、中性付近のpHで化学反応を進行させる 基質特異性がある(よく似た基質も見分けて反応を起こす) 基本的に反応の両方向を担う モルあたりの反応の効率が、無機触媒よりも良い などなど。特に常温、常圧、pH7.0前後で化学反応の活性を有すると言うことは、素晴らしいことであり、この点が生物体内における化学反応の進行にとって重要である。また、複雑な代謝系の制御も全て酵素が担っているが、この点は酵素の基質特異性による。
一方で、純粋な化学反応の触媒としてみた場合、酵素はいくつかの点で無機触媒に劣る面もある。
高温を与えると、熱変性する 極端な高pH、低pHによって変性する 長期間使用し続けると、常温であっても立体構造を維持できなくなる 基質特異性が邪魔をして、化学反応の融通が利かない などなど。白金などは優れた気体などの触媒として用いられているが、酵素は基質特異的にしか反応を起こせず、反応の汎用性が期待できない。また、工業利用を行なう場合では、特に酵素がタンパク質であることが、ネックとなり、長期間の使用に耐えるとはいえない。ただし、好熱菌、好酸性菌、好アルカリ菌などの酵素(イクストリーモザイム)は、極端な温度やpHに耐えうるとされており、こうした極限環境微生物の応用から酵素の工業利用が現実的になり始めている。
[編集] 酵素反応と外的因子 酵素の反応は、常温、常圧、pH中性付近で働くと述べたが、一般に化学反応はこうした外的因子が極端(温度を上昇させるか、pHを変化させる)であればあるほど進行する。例えば、水が水素と酸素に分かれる反応は触媒無しの場合、温度を3,500℃以上に上昇すると進行する。しかしながら水の電気分解などでは、室温程度の温度で進行する。
酵素を用いる系でも低温よりは高温のほうが進行しやすいが、ある程度の高温になるとタンパク質の立体構造を保つことが難しくなり、活性が保てなくなる。こうした熱によって活性を失うことを『熱失活』(ねつしっかつ)という。したがって、ある温度を境にして反応速度は限りなく0に近づいていくが、こうした温度のことを『酵素の至適温度』という。
pHについても同様のことが言える。しかしながら酸化還元反応を担う酵素では、反応の進行方向によって『酵素の至適pH』が異なる場合がある。例えば、以下の反応
リンゴ酸+NAD+ → オキサロ酢酸+NADH は高pH、即ちアルカリ側で盛んに進行する。一方、逆反応
オキサロ酢酸+NADH → リンゴ酸+NAD+ は、低pH、即ち酸性側で進行する。
[編集] 酵素反応と基質濃度 基質濃度の上昇は化学反応をより進行させるが、酵素を用いた反応系では酵素が有限の場合、酵素量によって反応速度が決定される。即ち、基質濃度を無限に上昇させても、反応速度はあくまで酵素量によって決定されると言うことである。これは酵素と基質が複合体を作って反応を進行させるという酵素基質複合体モデルによるものである。このモデルによると、酵素を用いた系では以下の式で反応が進行する。
酵素(E)+基質(S) ⇔ ES(酵素基質複合体) → E+生産物(P) 酵素、基質と酵素基質複合体は可逆的反応だが、生産物以降は系を変えない限りは不可逆的である。ここで、各反応について以下の速度定数(k)を当てはめる。
k1 = E+S → ES k-1 = ES → E+S k2 = ES → E+P 基質が十分量存在し、これらの物質の各濃度の釣り合いが取れる程度の反応が進行した状態を定常状態(ていじょうじょうたい)という。定常状態では酵素の能力がフルに発揮され反応速度は最大速度(Vmax)となる。定常状態では以下の式が成り立つ。
k1[E][S] = k-1[ES] + k2[ES] ([]は各物質の濃度を現す) ここで、以下の式が成立する。
K(平衡定数)= (k-1 + k2)/k1 この定常状態の時の平衡定数 K(へいこうていすう、へいこうじょうすう)は、Kmと表記され『ミカエリス・メンテン定数』と呼ばれる。ミカエリス・メンテン定数とは、酵素と基質の親和性を表すパラメータであり、実測値としては酵素の最大速度の2分の1の反応速度(Vmax/2)を有する基質濃度となる。Km値と基質親和性の関係は以下の通りである。
Km値が低いと、酵素と基質の親和性は高い(酵素と基質は相性が良い) Km値が高いと、酵素と基質の親和性は低い(酵素と基質は相性が悪い) Km値の高低が親和性と逆の概念なのが、理解に困難かもしれないが、Km値を実際に測定すると理解できる。
(元来ミカエリスとメンテンの理論ではE+SとESとの間の平衡を仮定しておりKmはその意味での平衡定数に当たる。しかしこの仮定はk2がk-1よりはるかに小さい特別な場合にしか当てはまらないので、のちにブリッグスとホールデンがより一般的な定常条件を仮定し、その場合でも同様の式が成り立つことを示した。)→ミカエリス・メンテン式
また、Vmaxと関連した値で分子活性(kcat)という値が存在する。これはタンパク質1分子辺り、1秒間に何個の基質を触媒するかと言うパラメータである。式は以下のように表される。
kcat = 基質分子濃度(M)/酵素分子濃度(M)*秒 ここで、同じ濃度の単位が打ち消しあうため、kcatは『XXXXs-1』(Xは数字)という表記で現される。例を挙げれば、酵素1分子辺り、1秒間に100個の基質分子を触媒すれば、『100s-1』となる。極めて分子活性の高い酵素にカルボニックアンハイドラーゼという酵素があるが、この酵素は1秒当たり100万個の二酸化炭素を炭酸イオンに変化させる(106s-1)。
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