共生
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共生(きょうせい・Symbiosis、元の用字は共棲)とは、他の生物から養分や危険からの保護などの利益を得る代わりに、その生物にとって何等かの利益を提供するといった、異なる生物種間の相互依存関係のことを指す。転じて、経済学上の異業種業務提携等もこう呼ぶ場合がある。

双方の生物種がこの関係で利益を得る場合を相利共生(そうりきょうせい)、片方のみが利益を得る場合を片利共生(へんりきょうせい)という。また、片方のみが利益を得、相手方が不利益を被る場合を寄生(きせい)という。しかし、後に詳しく述べるようにこれらの3つの状態は連続しており、どれかひとつに定めることの難しい関係も多い。

目次 [非表示]
1 共生の例
2 細胞外共生と細胞内共生
3 伝播
4 リン・マーギュリスの共生説
5 共生の位置づけ



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共生の例

カクレクマノミとイソギンチャク魚類であるクマノミと、刺胞動物であるイソギンチャクの共生関係は有名である。イソギンチャクの触手には、異物に触れると毒針を発射する「刺胞」という細胞が無数にあり、これで魚などを麻痺させて捕食している。ところがクマノミの体表には特殊な粘液が分泌され、イソギンチャクの刺胞は反応しない。このためクマノミは大型イソギンチャクの周囲を棲みかにして外敵から身を守ることができる。一方、イソギンチャクがこの関係からどの様な利益を得ているかはっきりせず、この関係は片利共生とみられる。クマノミのほかにもイソギンチャクカクレエビなど、イソギンチャクと共生する生物は多い。
ヤドカリやカニの中には、小型のイソギンチャクをはさみや貝殻につけて身を守る種類がある。ヤドカリは自分の体が大きくなると貝殻を替えなければならないが、そのときはヤドカリがはさみで剥がしたり、イソギンチャクが自ら移動する。お互いに食物のやりとりもしているとみられる。
相利共生の例として地衣類(ちいるい)が挙げられる。ウメノキゴケなどの地衣類は菌類と藻類(シアノバクテリアあるいは緑藻)からなる共生体で、菌類は乾燥などの環境変化から共生体を保護し、藻類は光合成によって栄養供給の役割を担っているなど、高度に相互依存している。
マメ科の植物は根に根粒菌と呼ばれる細菌を共生させている。根粒菌は植物が利用不可能な大気中の窒素を、植物が養分として取り込むことのできる窒素固定産物として供給し、植物は根粒菌に栄養として炭水化物を与えている。
アブラムシ(アリマキ)と、その細胞内で生息するブフネラという細菌は、非常に強い相利共生の関係にある。アブラムシが主食としている植物の師管液には、グルタミンとアスパラギン以外の必須アミノ酸はほとんど含まれていない。本来ならアブラムシはこれだけで生命を維持することは不可能なはずである。しかしアブラムシの細胞内のブフネラが、これら2つのアミノ酸を基に他のアミノ酸を合成し、アブラムシの細胞内に供給しているため、師管液のみで必要な栄養を得ることができる。アブラムシはブフネラなしでは生命を維持することができない。一方、ブフネラは自らの生命を維持するための遺伝子の多くを失っており、アブラムシの細胞内でしか分裂・増殖することができない。この共生関係は2億年にわたり世代間で引き継がれてきており、共生がなされる以前のブフネラの祖先は大腸菌の仲間であったと考えられている。(Shigenobu, S. et al. Nature 407, 81-86 (2000))
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細胞外共生と細胞内共生
微生物の共生を考えた場合、大きくわけて細胞外共生と細胞内共生とにわけることができる。前項にあるアブラムシではアブラムシの細胞内にブフネラが生息しており、こういった共生形態を細胞内共生と呼ぶ。逆に細胞外に作られた構造体(粘液性物質や糖鎖などで作られる)中で共生する形態を細胞外共生と呼ぶ。一般的に細胞内共生の方が単独で生育不能なことが多く、そのために必要な遺伝子を失っていることも多い為、より進んだ共生であると考えられている。 これに対し、クマノミとイソギンチャクのような関係は体外共生と呼ばれる。

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伝播
共生関係をとる生物が出会い、共生関係になる過程を伝播と呼ぶ。卵などを通じて親から共生関係を受け継ぐ場合を垂直伝播、環境を介して受け継ぐ場合を水平伝播といい、共生の形態を理解する上で重要な事項である。

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リン・マーギュリスの共生説
リン・マーギュリス(Lynn Margulis,1938年‐)は真核生物の細胞内にあるミトコンドリアや葉緑体は、細胞内共生をしていた細菌が起源であるという説を提唱した。これらの細胞小器官は独自のDNAを持つことから、1970年代以降この説は広く受け入れられている。詳細は細胞内共生説を参照せよ。

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共生の位置づけ
元々、生物学の中では、共生は種間関係の中でも特殊なものと考えられがちであった。これは、世の中のものは、基本的には互いに競争関係にあるはずだという西欧科学の思想に基づくものだと思われる。一昔前の日本の生態学者の書いた教科書にも、捕食-被食関係、競争関係、共生関係、寄生関係の4つの生物の種間関係のパターンうち、あくまでも主流とみなすべきは捕食被食関係と競争関係であり、共生や寄生は例外的なものとして重視するべきではないと書いたものもあった。しかしながら、近年、実は、共生が生物の世界でかなり普遍的なものであり、生物の群集構造の中で大きな役割を果たしていることがわかってきた。

マーギュリスの細胞内共生説もその例であり、しかも、細胞内共生が、彼女の想定したものを遙かに超えて行われていることが、最近の研究で明らかになっている。

また、陸上植物の中で、菌根を作るのは、ごく一部の植物だとされてきたのも、VA菌根菌の研究により、実は多数の陸上植物が菌根の形で菌類と共生関係を結んでいることがわかりつつある。 海洋でも、珊瑚礁を構成する造礁サンゴは、その体内に褐虫藻を共生させており、その光合成産物を供給されている。 このように、共生は、生態系に大きな影響を与える様な働きに関わってもいる。

また、かつては共生と寄生は別の現象とみなされたが、関係する生物相互の駆け引きのバランスによって双方が利益を得る状態(いわゆる相利共生)、片方が利益を得るがもう片方には害も益もない状態(いわゆる片利共生)、片方が利益を得てもう片方が被害を受ける状態(いわゆる寄生)が、それぞれ連続して移行しうる例が多く見つかってり、互いにはっきりと分離できないことがわかってきた。

例えば植物の体内で病気を起こさずに生活をしている菌類をエンドファイトと呼ぶ。エンドファイトは片利共生的なものが多いとされている。しかし種類によっては植物はエンドファイトの存在によって摂食阻害物質を獲得して草食動物に食べられにくくなるので、この場合は相利共生的である。ところが、相利共生的なエンドファイトの中には植物の有性生殖を阻害して栄養生殖だけで繁殖することを強いているものも多い。また、植物の生理状態が悪化するとエンドファイトが病原性を発現することもある。

共生の典型とみなされることの多い菌根にしても、植物と菌根菌が双方とも利益を得るもの(コツブタケとアカマツ)、植物と菌根菌の双方が利益を得てはいるのだけれど、植物の側のストレスが大きく、病原菌に近い側面を持つもの(ハルシメジとサクラ・マツタケとアカマツ)、植物が菌根菌から一方的に搾取しているもの(ベニタケとギンリョウソウ)と、多様な実態が知られている。

このように、生を共にするという点では共生と寄生は連続したひとつながりの現象とも言え、寄生も共生のパターンのひとつとしてとらえて、寄生はあくまでも共生のひとつのパターンとみなす場合も多くなっている。














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